小説家、装丁家の著者が育った東京・世田谷で「物心ついてから中学生に上がるくらいまで」の出来事をつづった随想集。なかでも幼少期からの本への愛着ぶりが伝わってくる文章が多く、「金曜日に図書館で本を借り、土曜日と日曜日に読むのがなによりの楽しみだった」と本書のタイトルに通じる思いも。
本はもちろん、昭和37年生まれの著者が過ごした時代の音楽、ラジオ、文房具や玩具、遊び、路地裏の情景なども描かれ、同世代にはたまらない。文庫化で収録されたエッセー「九人のおじさん」もノスタルジックな余韻に浸れる。(吉田篤弘著、中公文庫・580円+税)
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2020年12月27日 掲載
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