【話題の本】『黒い雲と白い雲との境目にグレーではない光が見える 26人のがんサバイバー』あの風プロジェクト著 がん闘病の思い託した短歌集

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 ■がん闘病の思い託した短歌集

 開いても元に戻りにくいコデックス装(製本)。刊行にいたるまでの物語が感じられる凜(りん)としたたたずまい。がんサバイバー(体験者)の女性26人の短歌に、西淑さんのファンタジーが感じられるイラストが添えられた短歌集だ。

 がんで闘病中の人が病院のベッドで読め、不安に寄り添いながら負担にならない本が作れないか-そんながんサバイバーの女性の思いから本作りは始まった。どんな本がいいのか。たどりついたのは、体力のないときでも読みやすい短歌集を、軽く開きやすい仕様でつくるということだった。費用はクラウドファンディングで募る。女性の呼びかけに25人が応じた。全員が短歌の素人。現代歌人の岡野大嗣さんの指導を仰ぎながら、それぞれが告知から現在にいたるまでの体験を振り返り、心に深く刻まれている思いを31文字に託した。《生まれたての傷をいたわる初めての沐浴(もくよく)に似た戸惑いの手で》

 出版の相談を受けた左右社の筒井菜央さんは「直観的に世に出すべき本」と思い、著者たちと丁寧なやりとりをしながら、同じ方向を向いて本作りに取り組んだ。初版は短歌集では異例の4000部。順調に売れているという。(左右社・1870円)

 桑原聡

産経新聞
2021年4月10日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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