直木賞受賞作『地図と拳』は「なぜ日本は負けるとわかっている戦争に突き進んだのか」小学生時代の疑問に応えた作品[文芸書ベストセラー]

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 3月7日トーハンの週間ベストセラーが発表され、文芸書第1位は『恋とそれとあと全部』が獲得した。
 第2位は『地図と拳』。第3位は『Dジェネシス ダンジョンが出来て3年 07』となった。

 2位にランクインした『地図と拳』は1月19日に発表された第168回直木賞の受賞作。日露戦争前夜から第二次大戦後までを背景に、満州の架空の町で様々な立場の人々が知略と殺戮を繰り広げる重厚な物語。作者の小川哲さんは刊行時に、自身が小学生のころ日本がなぜ負けるとわかっている戦争に突き進んだのか疑問だったと述べ、《戦争を「他人事」ではなく「自分の身にも起こりえること」だと理解すること。愚かな行為に至るまでの過程を知ること。「敗戦」というのが最終的な答えであるならば、その途中式を描くこと。そして何より、小学生の僕が抱いた疑問に応えること――それが『地図と拳』を執筆しようと思った根本的な動機だ。》と告白している。また受賞後のインタビューでは《戦争から時間が経てば経つほど、当事者として考えることがどんどん薄れてきてしまう。そういう遠くなってしまった戦争と、今生きている自分たちを当事者として結びつけることは重要で、昔の戦争が実は今とつながっているんだということを感じるために必要な回路を、フィクションは提供できると思っている》と同書に込めた思いを語っている。

1位『恋とそれとあと全部』住野よる[著](文藝春秋)

片想い男子とちょっと気にしすぎな女子。二人は友達だけど、違う生き物。一緒に過ごす、夏の特別な四日間。(文藝春秋ウェブサイトより)

2位『地図と拳』小川哲[著](集英社)

ひとつの都市が現われ、そして消えた。日露戦争前夜から第2次大戦まで、満洲の名もなき街へと呼び寄せられ、「燃える土」をめぐり殺戮の半世紀を生きる男たちの運命を描く。日本からの密偵に帯同し、通訳として満洲に渡った細川。ロシアの鉄道網拡大のために派遣された神父クラスニコフ。叔父にだまされ不毛の土地へと移住した孫悟空。地図に描かれた存在しない島を探し、海を渡った須野……。奉天の東にある〈李家鎮〉へと呼び寄せられた男たち。「燃える土」をめぐり、殺戮の半世紀を生きる。日本SF界の新星が放つ歴史×空想巨編!(集英社ウェブサイトより)

3位『Dジェネシス ダンジョンが出来て3年 07』之貫紀[著](KADOKAWA)

ついにタイラー博士とダンジョンの本体と思しき存在に接触した芳村と三好のDパワーズ二人は、ダンジョンの目的を聞かされて頭を抱えていた。そこへ、他探索者によってスキルオーブ〈マイニング〉が取得されたニュースが飛び込んでくる。〈マイニング〉の使用規定への施行が間に合うか微妙な状況に焦る芳村たちは。契約探索者として雇った三代絵里と、鉱物化学者の六条小麦を連れて碑文が記した層へと向けて代々木ダンジョンに潜る。そうしてたどり着いた21層で驚愕のドロップが!!(KADOKAWAウェブサイトより)

4位『継母の心得』トール[著](アルファポリス)

5位『#真相をお話しします』結城真一郎[著](新潮社)

6位『汝、星のごとく』凪良ゆう[著](講談社)

7位『田中家、転生する。5』猪口[著](KADOKAWA)

8位『ほっといて下さい6 従魔とチートライフ楽しみたい!』三園七詩[著](アルファポリス)

9位『方舟』夕木春央[著](講談社)

10位『黄色い家』川上未映子[著](中央公論新社)

〈文芸書ランキング 3月7日トーハン調べ〉

Book Bang編集部
2023年3月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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