マンガやアニメを科学する大人気シリーズ第4弾! 柳田理科雄『空想科学読本 「高い高い」で宇宙まで!』試し読み

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マンガやアニメには、魔法のような現象や驚異的なアイテムが登場する。名探偵コナンの「蝶ネクタイ型変声機」の仕組みは? ぐりとぐらが作った大きなカステラ、実際のサイズとは!? 気になるあれこれを科学的に徹底検証。誰もが夢中になること間違いなし!

大人気シリーズの角川文庫版、第4弾となる本書より、「「源氏物語」では、光源氏の涙で枕が浮いた! どんだけ泣いたんだ!?」を1篇まるまる特別公開いたします。

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柳田理科雄『空想科学読本 「高い高い」で宇宙まで!』(角川文庫)より引用

 空想科学研究所では、2007年から希望される学校の図書館に「空想科学 図書館通信」を無料で配信していて、そこでは毎週一つずつ生徒たちの質問に答えている。ときどき先生から質問をいただくケースがあるのだが、この問題もその一つだ。

『源氏物語』は平安時代に紫式部によって書かれた物語で、「世界最古の長編小説」ともいわれている。主人公は、イケメンでいろいろ才能も豊かな光源氏。幼くして母を亡くしたこともあり、母に似た女性を見るや、道ならぬ恋に落ちてしまい、それも一人や二人じゃなくてもうウヒョウヒョと……という、いまだったら何度も謝罪会見するような人生である。でも、高校の古文の時間には必ず習うのである。大学入試にも出るのである。不思議である。

 で、この光源氏がある晩、波の音を聞いているうちに「涙おつともおぼえぬに枕うくばかりになりにけり」。質問をくださった先生が添えてくれた現代語訳によれば「気がつくと、涙の海に枕が浮かぶほどになっていた」。うっひょ~、泣いたものですなあ!

 質問をくれた先生は高校の古文の授業中、生徒に「どれくらい泣くとこうなるのですか?」「こんなに泣いて、光源氏は死なないのですか?」と聞かれ、ちょっと困ってしまって、筆者のところに質問されたのでした。

 この問題、たいへん興味深いので、ここで読者の皆さんにも紹介したい。もちろん「枕が浮く」というのは光源氏の悲哀の深さを示す比喩だが、まことに味のある表現ではないですか!

柳田 理科雄(やなぎた りかお)
1961年鹿児島県種子島生まれ。東京大学中退。学習塾の講師を経て、96年『空想科学読本』を上梓。99年、空想科学研究所を設立し、マンガやアニメや特撮などの世界を科学的に研究する試みを続けている。

KADOKAWA カドブン
2023年7月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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