【話題の本】『さみしい夜にはペンを持て』古賀史健著、ならの絵

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■居場所がない中学生に

中学に居場所のない主人公が自分を知るために文章を書き、文章の中の自分を好きになる物語。不登校の子供が増える夏休み明けを控えた今、読んでほしい一冊だ。主に中学生向けの児童書だが、大人が読んでも文章を書きたくなるだろう。

主人公のタコジローは勉強も運動もおしゃべりも苦手。うまく話せず笑いものにされ、いじめられる自分が嫌い。教室に入るのは絶対に無理だと思って学校に行かなかった日、公園で不思議なおじさんと出会う。おじさんから「書くってね、自分と対話することなんだよ」と教わった主人公が日記を書き始めると―。

著者は哲学者との共著『嫌われる勇気』が世界的ベストセラーとなったライターで、「(上手に書くよりも)大切なのは、書くことを通じて自分と対話を重ね、知らなかった自分を発見し、自分を好きになっていくこと」とコメント。版元によると、7月の発売前から重版がかかり、すでに4刷を重ねた。

自分を見つめる日記は平安の昔から書かれてきた。夫の訪れが遠のく嘆きをつづった『蜻蛉(かげろう)日記』や、少女時代のあこがれと平凡な現実を回想した『更級(さらしな)日記』。書くことは心の救済につながるはず。(ポプラ社・1650円)

寺田理恵

産経新聞
2023年8月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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