『[よりぬき]今日もていねいに。BEST101』
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【毎日書評】松浦弥太郎が仕事をもっと輝かせるために気をつけている2つのこと
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
この本は、暮らしのなかの工夫と発見ノートのシリーズとして発刊し、多くの読者の方の支持を得てベストセラーとなった『今日もていねいに。』『あたらしいあたりまえ。』『あなたにありがとう。』の三冊の本の中から選び抜いた一〇一のエッセイを、暮らし、仕事の工夫、人づきあいの三つの章にわけて、再編集したものです。(『はじめに』にかえて」より)
冒頭にこう書かれているとおり、『[よりぬき] 今日もていねいに。BEST101』(松浦弥太郎 著、PHP文庫)は著者の代表作をまとめたエッセンシャル版。
ときに迷い、ときに悩みながらも、自身の経験を通じて発見し、工夫を重ねながらノートに書き続けてきた「毎日を大切に、ていねいに生きるためのヒント」が詰まっているのだそうです。
各項目がコンパクトにまとめられているため、読み物として純粋に楽しむことも可能。しかしその一方、実用性を意識して書かれてもいるようです。もちろんすべてを実行するのは難しいかもしれませんが、「いいな」「これはやってみたい」「できそうだな」と思ったことを見つけたら、すぐに実行できるわけです。
この本に書かれたヒントは、僕の宝物です。
めまぐるしい人生のなかで汗をかきながら探し、見つけ、掘り出した、小さな、だけれども僕にとっては特別な宝物。僕はその宝物を独り占めにしようとは思いません。あなたのお役に立てていただけるなら、喜んで差し上げたいのです。
そのかわりに、どうかこの宝物を大事にしてください。ぴかぴかに光る宝物を眺めて楽しむだけではもったいない。うんと使ってお役に立ててほしいのです。(『はじめに』にかえて」より)
そんな本書の第二章「小さな創意と工夫であなたの仕事は輝き始める」のなかから、2つのポイントをピックアップしてみたいと思います。
まずは自分で考える
わからないことに直面し、「これはなんだろう?」と感じたとき、隣の人に尋ねたりすることはあるもの。あるいは、インターネットで検索したりすることも少なくないかもしれません。
しかし著者はそれを、「たいそう危険なこと」と述べています。たしかに仕事や暮らしの場においては、わからないことが次から次へと出てきます。しかし、そんなときすぐ人に聞いてしまうと、頭が退化してしまうというのです。
インターネットについても同じで、「考える」という行為を省略して外に答えを求める習慣がつくと、心があくせくしてくるもの。
面倒なプロセスを飛ばし、素早く近道を通って答えにたどり着こうとするーー。そんなことと日常的に続けていると、少しでも「わからない状態」が続くとイライラしてきたりすることも考えられるわけです。
それどころか、そうやって得た答えが間違っていた場合、「〇〇さんのいったとおりにしたのに」「インターネットで検索したのに」と、責任転嫁をしてしまう可能性も否定できません。
自分で考えず、人の答えを鵜呑みにして、いらいらしたり誰かのせいにしたりーーこんなひどい人間になってしまいかねない習慣は、さっさとやめたほうがいいのです。
「まずは、自分で考える」
これをスローガンにして、毎日自分に言い聞かせましょう。わからなかったら、まずは自分一人で、静かに考えること。とことん考え抜くこと。(133ページより)
もちろん時間はかかるかもしれませんが、そうすれば理解は確実に深くなるというわけです。(131ページより)
自分を整える
「仕事の基本はなんですか?」と聞かれたとき、また、「人と関わる基本はなんですか?」と問われた際にも、著者は「絶対条件は健康管理」だと答えるのだとか。いうまでもなく、すべてにおいて必要なのは、まず自分を整えることだという思いがあるから。
なるほど体調がすぐれなければ、人と接するのは難しく、そればかりか相手に負担をかけてしまうことになるかもしれません。ミスをしでかす原因が、体のコンディションにあったというケースも考えられるでしょう。
具合が悪いときには人を気遣えないし、思いやりももてないはず。何はなくともよく眠り、きちんと食事をし、すこやかな体であらねばなりません。(137ページより)
また、同じように大切なのが身だしなみ。どんなときも身ぎれいにしておくことは、人と関わる際の絶対条件だということです。昨今は洋服に気を遣う人が増えてもいますが、それだけに「体そのもの」を手入れしているかどうかも重要になってくるようです。
たとえば髪の毛。髪の手入れをきちんとしている人は信頼できるし、すてきだと思います。逆にいうと、髪が乱れていたり、のびっぱなしだったりすると、生活態度や仕事ぶりも荒れたものに感じます。(138ページより)
さらには髪と並び、著者は手の美しさも重視しています。
男女を問わず、指先というのは目立つもので、ふと差し出した指がきたなかったり、ペンを使う手が汚れていると、なんだか幻滅してしまいます。
手のきれいさは信頼感、安心感にもつながると考えているので、僕自身、指先や爪の手入れは怠らないようにしています。(139ページより)
とはいえ著者のいう「きれいな手」とは、いわゆる「白魚のような手」を指すわけではないようです。畑仕事をしている人は必然的に手が汚れる可能性がありますし、機械を使う仕事の人は脂が染み込んだ分厚い手になるでしょう。しかし、たとえ汚れているように見えたとしても、手入れをしているかいないかは、ちゃんとわかるもの。
つまり、その人が心配りをもって手入れをしているのなら、どんな仕事をしている人の手であっても「きれいな手」だといえるということです。(137ページより)
前述したようにコンパクトにまとめられているため、目についた項目を拾い読みすることも可能。空いた時間に開いてみることのできる、なにかと役立ちそうな一冊です。
Source: PHP文庫