【話題の本】『くらべて、けみして 校閲部の九重さん』こいしゆうか著

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■“本の裏方”リアルに

新潮社校閲部は高度なプロ集団として出版業界で知られる。数々の逸話を持つOBがおり、今も50人が所属する。「これを作品にしない手はない」と、編集担当の渋谷祐介さんが実用コミックで人気の著者に依頼。校閲部の全面協力も得て、架空の出版社の校閲部員、九重(くじゅう)さんを主人公として文芸校閲者の日常をリアルに描くお仕事漫画ができた。

校閲者は小説のゲラ(試し刷り)を読み、作中の事実関係から人物の性格描写まで徹底的にチェック、矛盾点などを指摘する。本書でも「校閲と作者はゲラで戦う」と作家とのやりとりなどを紹介。直筆原稿の文字が判読できなかった石原慎太郎、指摘に丁寧に返事をした江藤淳のほか、現役作家たちのエピソードも。

『小説新潮』で連載され、昨年12月に出版。現在2刷1万1000部で勢いは衰えず、3刷が視野に入り、続巻の話も進んでいる。「読者層は40~60代で女性が多く、文芸好き、本に興味がある方たち。限りなくノンフィクションに近い〝本の裏方〟の世界を楽しんでいただけているようです」と渋谷さん。

作中、九重さんが校閲に力を入れる理由として語る「百年後に残す一冊を作っていくという意志」にグッときた。(新潮社・1265円)

三保谷浩輝

産経新聞
2024年3月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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