【話題の本】『凡人のためのあっぱれな最期』樋口裕一著

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■妻の死をつづる

ベストセラー『頭がいい人、悪い人の話し方』などで知られる著者は2年前、がんのため妻を亡くした。著者より10歳年下の61歳だった。妻は闘病中、あたふたとする家族をよそに「死について嘆くことなく、苦しみを口にすることなく、あっぱれな最期を迎えた」という。

「欠点の多い普通の人間」だった妻が、なぜあっぱれな最期を迎えられたのか―。著者は、やがて夏目漱石の句「菫(すみれ)ほどな小さき人に生まれたし」が妻の生き方を表しているのではないかと気づく。本書では妻の人生と死をリアルに振り返りつつ、古今東西の文学・哲学から死生観を考察し、「よく死ぬための生き方」を探っている。1月末に発売、版元によると、堅調な売れ行きに加え、3月にインターネットサイト「婦人公論.jp」に掲載された本書の紹介記事が150万PVと注目された。「妻に先立たれた男性の本は少なかったのか、読者の共感を呼んだようです」と編集担当の木田明理さん。

本書には、妻の死後、「これからどうやって生きていけばよいのか」と残された人の煩悶(はんもん)もあふれる。木田さんは「身近な人を亡くした人の力になり、また生きていくためのヒントが詰まっているのでは」と話している。(幻冬舎新書・1056円)

三保谷浩輝

産経新聞
2024年5月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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