『時代小説で旅する東海道五十三次 江戸・日本橋~浜松編』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
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『時代小説で旅する東海道五十三次 舞坂~京・三条大橋編』
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時代小説で旅する東海道五十三次 江戸・日本橋~浜松編、舞坂~京・三条大橋編 [著]岡村直樹
[レビュアー] 縄田一男(文芸評論家)
「おい弥次さん」
「何でぇ喜多さん」
「頃も平成と改って随分経つ。どうでぇ、もう一回、東海道五十三次と洒落こまねえか」
「そいつぁいいが、道中双六は持ったのかい」
「道中双六よりも、もっと面白えものがあるのよ。岡村直樹って御仁が書いた『時代小説で旅する東海道五十三次』全二冊だ」
「へえ、そいつは何でぇ」
「一巻目は江戸・日本橋~浜松編、二巻目は舞坂~京・三条大橋編だ。それでこいつのどこが面白いかてぇと、近頃、流行のコラボってやつよ。たとえば「第一宿 品川『月影兵庫 上段霞切り』」のところを見ると、品川宿のガイドがあり、次に『月影兵庫』のあらすじと読みどころ、そんでもってもひとつおまけで“まだまだあるぞ品川宿を舞台とした逸品”として四作品が並べてある。そして写真も満載だ」
「へえー、そいつぁ、往年の名作から最近の逸品まで、旅と小説の両方のガイドになってるってわけかい」
「だからコラボといっただろ」
「へえー、ちょいと見せてくんねぇ。おぉおぉ、並んでる、並んでる。『桃太郎侍』や『右京介巡察記』なんて懐しいのから、永遠のスタンダードとなった『雲霧仁左衛門』や『影武者 徳川家康』……。おっと、藤沢周平が絶讃した『天下を汝に 戦国外交の雄・今川氏真』(赤木駿介)まで、目配りがいいじゃねえか、目配りがよぉ。嬉しくなるぜ」
「そうだろう」
「また『旅は道連れ――あとがきに代えて』がいいね。書いたお人の洒落な人柄が伝わって来て。こういっちゃあ何だが、こいつぁ、随分、手間暇かかる道楽だぜ」
「コラッ! こういうお人がいるから、俺たちの旅もずんと面白くなるんじゃねえか。だが、ここに載っている本、旅のお伴にどうやって持ってく? そいつだけが頭が痛ぇ」
「ぜいたくいうねぇ」