新たな解決策を生み出す「共創発想法」とは?

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いい考えがやってくる!

『いい考えがやってくる!』

著者
井上滋樹 [著]
出版社
日本経済新聞出版社
ISBN
9784532321499
発売日
2017/06/24
価格
1,620円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

新たな解決策を生み出す「共創発想法」とは?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

「いい考え」は、よりよい生活をしていくうえでの起点です。

昨日より今日を少しでも楽しく過ごすために、仕事で成果を上げるために、プライベートを充実させるために、自分の夢を実現させるために、さらには、自分という存在を超えて、困っている人を助けたり、社会に貢献するために。「いい考え」は、あなたの人生をより彩り豊かなものにしてくれるでしょう。

(「はじめに」より)

こう語るのは、『いい考えがやってくる!』(井上滋樹著、日本経済新聞出版社)の著者。九州大学大学院芸術工学研究院教授であり、「デザインとコミュニケーションによる社会課題の解決」をテーマに掲げ、人間を中心としたデザイン、イノベーションのための発想法を研究しているという人物です。

ちなみに本書は「アイデア発想」の本ではなく、ビジネスに有用で「よりよい生活をしていくため、人生に役立ついい考え」を生み出す方法を紹介したものなのだそうです。実際に手を動かして「描いて」みる、「変身」して街に出かけてみる、「未来」に行っていまを眺めてみるなど「生身の人間の生きた体験や行動」を通じ、「いい考え」を生み出す方法を5つのアプローチにまとめているのだということ。

きょうは、「みんなの知恵がみんなの課題を解決する」ことに焦点を当てた第4章「『つながる』共創発想法」に注目したいと思います。

つながることがアイデアを生む

近年、広告のようにクリエイティブな領域において、大きな変化が起きていると著者は指摘しています。世界中の主たる広告会社が、これまで手を組むことのなかった異業種の人たちと連携しはじめているというのです。

いうまでもなく、これまではテレビが最大の広告メディアでした。テレビの影響力が、とても大きかったわけです。しかし現代においては状況が異なり、SNS上にプロモーション動画を流すと、一瞬で世界中の何百万もの人々に情報が行きわたるということが当然のように起きています。

日本国内だけで放映されるテレビCMを流すよりも、YouTubeなどを利用して発信するほうが世界中の人々にリーチできるということ。だからこそ、そうした変化を受け、コンテンツ制作方法も、マーケティング手法も変わってきているというわけです。

そして広告の世界では、スマホのアプリを制作するIT系のクリエイター、ネット上で好まれる映像を制作するアーティスト、ビッグデータを扱うデータサイエンティスト、そしてプロダクトをつくる人たちが一緒になって作品をつくっているケースも多いのだとか。これが、著者がいう「共創」につながる発想法のポイントです。(135ページより)

共創発想法とは

共創発想法においては自分ではなく、「みんなの知恵がみんなの課題を解決する」ことに着目しているのだそうです。背景や職業、専門などが異なる人同士が「つながる」ことによって、新しい解決策を生み出す発想法だということ。自分と異なる人と「出会い」、「観察」することで「課題」を解決する「いい考え」を生み出す手法であるわけです。最近では、イノベーションを生み出すための手法として世界中で注目されているそうです。

・ まず、自分と異なる人と「出会い」、その人の考え方や意見に刺激を受けることから始まる。

・ 異なる人同士が「つながる」ことで、いままで気づかなかった新しい「課題」が発見できる。

・ 「課題」を解決するのは、「アイデア」である。「共創」することで1人では思いつかなかった良い「アイデア」が生まれる。

・ みんなで考えた「アイデア」は、皆が一緒の方向、目標に向かって動き出す羅針盤として機能する。結果的に、みんなで解決しようと高いモチベーションが生まれる。

(138ページより)

まず最初のスタートラインは、自分とは異なる人との「出会い」。自分にないものを相手に見つけ、その人の考え方や意見に刺激を受けるということです。育った環境や生い立つが違う、経験が違う、所属する組織や専門分野が違う、年齢や性別が違うなど、自分と異なる人と話すのは、刺激的で楽しいもの。いつも会っている人からは得られない、新たな発見がたくさんあるということです。当然のことながら、相手も同じことを感じるでしょう。

とはいえ共創発想法は、楽しい会話に終始するものではなく、「共創」は「課題」を解決するために使う発想法だと著者はいいます。扱う課題は、会社の課題でも、地域の課題でも、社会全体や世界の課題でもかまわないのだとか。

たとえば高齢者向けのサービスを開発するとき、「独り暮らしの高齢者が、実はこんなことで困っていた」というような「課題」がわかれば、それを解決することによって、よりよいサービスが生まれることになるわけです。つまり「共創」のプロセスにおいては、「課題」を発見することがとても重要。逆にいえば多くの場合、「なにが課題か」がわかっていないということです

異なる者同士が共に働くと、1人では見つけられなかった課題を発見することが可能になります。その段階で「そうか、こんな課題があったんだ!」と感じることができる発見に出会うと、課題の解決に向けて共に進もうというモチベーションが生まれます。そうした「発見」や「感動」を共有するプロセスが、とても重要だということです。(137ページより)

出会いを求めて「クロス地点」に行く

多くの人は、自分以外の誰かに惹かれ、パートナーとして共に生きるようになるもの。自分と似ている部分を意識しながらも、異なる「どこか」を補い合うことによって新しいものを生み出すことができるわけです。

とはいえ自分と異なる意見というものは、必ずしも魅力的に思えないものでもあります。そのいい例が反対意見。しかし、たとえ反対意見であったとしても、「なぜそういう意見が出てくるのか」という問題についての根幹を共有できれば、「違い」を理解できることになるということ。反対、賛成ではなく、共に考え、解決策を提案することができるという考え方です。

20世紀は、差別、対立の時代だった。21世紀になり、人種や性別が異なっても人はみな平等で絵あり、対立よりも対話で課題を解決するという価値観が共有されつつある。

しかし、「違い」を理解しあうだけでは差別や対立などの課題は解決しない。課題解決のための大きな原動力になるのが「アイデア」だ。素晴らしい「アイデア」は、反対意見や異なる意見を持つ人を、同じ方向に向けさせる羅針盤の役目を立たす。(140ページより)

昨日までまったく知らなかった人と、意気投合することはあるものです。しかし、自分が知らない人は自分とは異なる知識や知恵を持っているものなので、同じ質問を投げかけても、違う答えが返ってくることもあり得ます。性別はもちろんのこと、生い立ちや年齢、その人の経験に基づいて発想が生まれるわけです。

同じ家に住んでいる兄弟や夫婦であっても、それぞれが異なる意見を持っています。だからこそ「違い」を理解し、課題を発見することによって、「どうしたらその課題を解決できるのか」について共に考えはじめることができるようになります。つまりそこから「共創」がはじまるというのです。

なお「共創」をはじめる前に、真っ先にはじめなければならない大切なことがあるのだと著者はいいます。それは、相手に出会うこと。これまでと同じ仕事の仕方を続けていても、新しい事業をつくりだせない、あるいは先が見えない。そのことに気がついて、多くの人が動き出している。そして、そうした同じ問題意識を持っている場所が「クロス地点」なのだと解説しています。

出会いの「クロス地点」とは、「同じ」問題意識を持っている「違う」人が集まる場所だ。

例えば、セミナーや勉強会をイメージしてほしい。あなたが興味を持った会場に行くとしよう。そこであなたは、あなたと同じようにそのセミナーに関心を抱いた人に出会う。そこが出会いの「クロス地点」だ。そこで出会った人は、同じ課題に対して別のアプローチをもって、共に解決策を考える仲間になり得る。

セミナーや勉強会に行くのは面倒だ、知らない人に声をかけるのは苦手だ、という人はいま所属している組織で「共創」を始めるのもいいだろう。

出会いの場は、会社の廊下だったりする。(159ページより)

廊下やコピー機の前で別の部署の人と会うことは、多くの会社であるもの。つまり、実はいろいろなところに出会いの「クロス地点」があるというのです。同じことは会社のなかだけでなく街中にもあるはず。

どこで出会ったのだとしてもたまたま知り合った人に対して「なんだかおもしろい人だな」「この人は自分と同じものに興味を持っているな」などと思ったら、その人が競争相手になる人だということです。(140ページより)

従来の「アイデア発想法」の類とは異なり、「実際に手を動かす」ことを大前提とした本書のアプローチはオリジナリティ豊か。興味を持ったメソッドを実際に試してみれば、従来にはなかったアイデアを引き出すことができるかもしれません。

メディアジーン lifehacker
2017年7月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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