『26階だてのツリーハウス』
- 著者
- アンディ・グリフィス [著]/テリー・デントン [イラスト]/中井 はるの [訳]
- 出版社
- ポプラ社
- ジャンル
- 文学/外国文学小説
- ISBN
- 9784591156759
- 発売日
- 2018/01/11
- 価格
- 1,430円(税込)
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はちゃめちゃな大人が大暴れ! 『26階だてのツリーハウス』訳者・中井はるのさんインタビュー
[文] 野本由起
『13階だてのツリーハウス』は、はちゃめちゃな2人組、アンディとテリーが大騒動を繰り広げる物語です。ツリーハウスには、ソーダの噴水、マシュマロ・マシン、ゲーム用の部屋、秘密の地下実験室など、ワクワクするような仕掛けがいっぱい。オーストラリアで発売されるやいなや、子どもたちから圧倒的な支持を得ました。
そんなツリーハウスが増築され、今度は2倍の高さに! 海賊まで登場し、ワクワク感も倍増した『26階だてのツリーハウス 海賊なんてキライ!』について、訳者の中井はるのさんに見どころをうかがいました。
想像力とワクワク感をかきたてる「ツリーハウス」へようこそ
――「ツリーハウス」シリーズの翻訳を手掛けることになったきっかけを教えてください。
オーストラリアでとても売れている本があるとニュースで知り、原書を取り寄せて読んだところ非常に面白かったんです。そこで、ポプラ社に「翻訳書を出しませんか?」と提案しました。
――翻訳する作品は、ご自身で見つけてくることが多いのでしょうか?
私の場合、出版社に企画を持ち込むことが多いですね。『グレッグのダメ日記』もそうでした。『13階だてのツリーハウス』は、『グレッグのダメ日記』のように文章と絵がいっしょになっています。『グレッグのダメ日記』が子どもにうけて売れていて、ボリュームもちょうど同じぐらいだったので、ポプラ社で刊行するのが適しているのではないかと思いました。
このほかにも、同じような絵が多い『グレッグのダメ日記』の後にでた児童書を読んでいたのですが、「これは」と思う本はなかなか見つからないんですよね。アメリカで売れていても、日本ではダメなんです。でも『13階だてのツリーハウス』は、ナンセンスですがストーリーが面白く、文章と絵もうまくリンクしていました。オーストラリアでもすでにヒットしていたので、「これは火がつくかもしれない」と思ったんです。
――現在、世界中で400万部を突破しているそうです。この作品の魅力についてお聞かせください。
誰もがあこがれるツリーハウスが舞台なので、ワクワクしますよね。ツリーハウスの絵もキレイで、「サメのプールがある!」「この部屋で何が起きるんだろう」と想像が広がります。「自分も住んでみたい」と思うでしょうし、日本で受け入れられやすいだろうなと思いました。
――日本で受ける児童書には、何か傾向があるのでしょうか。
日本に限りませんが、ストーリーに共感できることがポイントかもしれません。『ツリーハウス』シリーズはナンセンスながらもストーリーが成立していますし、お子さんでも「はちゃめちゃだけど面白いね」と思えるはず。ちょっとくだらないところも、またいいのかなと思います。「よくこんなことを考えつくな」というユニークな発想が詰まっているんですよね。
――『13階だてのツリーハウス』の反響はいかがでしたか?
読者は男の子が多いのかなと思っていましたが、わざわざお手紙を送ってくれるのは女の子が多かったですね。アンディとテリーにそっくりの似顔絵を送ってくれるお子さんもいました。この本は文章を書くアンディとイラストレーターのテリーというコンビで作っているのですが、「大きくなったら作家になりたい」「どうやったら絵が上手になりますか?」という質問のお手紙も。この本を読んだことで作家やイラストレーターという職業に興味を抱き、お子さんの夢のひとつになったようです。
『シンデレラ』『ピーターパン』など児童書のオマージュも!
――このたびシリーズ第2作『26階だてのツリーハウス』が発売されました。こちらは、前作の発売からすぐに刊行が決まったのでしょうか。
そうですね。「グレッグのダメ日記」シリーズ最新作と作業が重なり大変でした。でも、2作目になり、キャラクターが定着したなと思いました。どのシリーズでもそうですが、いつも1作目は手探りで悩みながら訳していきます。1巻で人間関係などを間違えるとそのあと大変なことになるので、確認をしつつ2作目以降にバトンタッチできるよう心掛けています。
――1作目を訳す時は、どのような点に苦労するのでしょうか。
最初に訳す時に、原文のイメージから各キャラクターの口調などを決め、キャラクター付けをしていきます。また、固有名詞や造語も子どもたちに親しんでもらえるよう工夫しました。
とはいえ、「ツリーハウス」シリーズは登場人物がそれほど多くないので、あまり苦労しませんでした。1作目で言葉の特徴、話し方を決めてあったので、2作目も読んでいて飽きないようにふたりの言葉遣いを生き生きさせるように訳していきました。
――とはいえ、2作目にはキノアタマ船長のような新しいキャラクターも登場しています。
「キノアタマ船長」は原文だと「Captain Woodenhead」なので、そのままストレートに訳しました。カタカナで読みやすい名前にしました。楽しく一気に訳すタイプの本でした。
――『26階だてのツリーハウス』の見どころをお聞かせください。
『シンデレラ』『ピーターパン』などの児童書を踏まえたシーンが出てくるのが、面白いですね。児童書が好きなお子さんは「あ、あの話かな」と思って読むと楽しいでしょうし、まだ読んだことのないお子さんはこの本をきっかけに児童書に触れてくれたらうれしいです。
――テリーの本棚に『グレッグのダメ日記』らしき本が置かれている絵もありましたね。
そうなんです。訳した本が、別の本の中に登場するのがうれしくて。ポプラ社以外から出した本にもあるとうきうきします。今回は、そういったパロディも数多く取り入れられていると思いました。
――好きなシーンはありますか?
『ブレーメンの音楽隊』のように、動物たちが積み重なったイラストが好きです。とてもかわいいですよね。
ほかには、迷路のシーンも細部まで丁寧に描き込まれているなと思いました。作中のアンディとテリーはツリーハウスで一緒に暮らしていますが、「本当にツリーハウスで一緒に暮らしているのかもしれない」と思うぐらい文章と絵が密接なんです。
――『26階だてのツリーハウス』では、彼らの出会いや子ども時代についても語られます。テリーの両親は「危ないから」と言って子どもに何もさせてくれませんし、アンディの両親はとても厳しく、子どもをルールで縛りつけます。
これを読んで「あ、うちのお母さんみたい」と共感してくれるお子さんも多いのではないか思います。前作以上に共感度は上がっているように感じました。
ドキドキしながら本の世界へ羽ばたいてほしい
――このシリーズは、まだまだ続いていくのでしょうか。
原書では、シリーズ7作目の『91階だてのツリーハウス』まで刊行されています。作中のアンディとテリーは、ビッグノーズさんに頼まれて年に1冊本を書いています。実際、このシリーズも年に1冊ずつ刊行されているんです。
――オーストラリアの作家による児童書ですが、作品にお国柄は出るのでしょうか。オーストラリアの児童書の特徴、傾向があれば教えてください。
詳しいことはわからないのですが……。ただ、自然がからむダイナミックな作品が多いような気はします。でも、一概には言えないのでたまたま読んだ本がというのが正しいかも。ですが、オーストラリアの言葉の使い方で学びがありましたね。『13階だてのツリーハウス』に出てくるレモネードは、日本のレモネードとは違い、レモン味のソーダだというのをオーストラリアの方から教えてもらい、レモネードからソーダに直しました。固有名詞や現地で使われている言葉には気をつけないといけません。
――巻末には、アンディとテリーから日本の読者に向けたメッセージもついています。これもうれしいですよね。
彼らは毎回メッセージを書き下ろしてくれるんです。各国で違うメッセージをつけているようですね。サービス精神旺盛なんです。
――このシリーズの対象年齢は?
小学校3年生ぐらいでしょうか。実際、読者の年齢層もそれぐらいだそうです。
――どんなお子さんに楽しんでほしいですか?
「グレッグのダメ日記」シリーズが好きなお子さんに読んでほしいですね。「グレッグ」と違うのは、主人公が大人だということ。ナンセンスなお話なので「どうなるの!?」とドキドキしながら、本の世界に羽ばたいてもらえたらうれしいです。「面白かったな」と少しでも感じていただけたら、出したかいがあったなと幸せに思いますね。