優雅で不穏な「嘘と約束」――『アンソロジー 嘘と約束』著者新刊エッセイ 矢崎存美

エッセイ

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アンソロジー 嘘と約束

『アンソロジー 嘘と約束』

著者
アミの会(仮) [著]
出版社
光文社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784334912765
発売日
2019/04/18
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

優雅で不穏な「嘘と約束」

[レビュアー] 矢崎存美(作家)

 現在発売中の『嘘と約束』は、アミの会(仮)が世に出したアンソロジーの第六弾(七冊目)です。テーマとタイトルが一緒でシンプルだけど、とても魅力的でかつ面白いアンソロジーに仕上がったと自負しております。よろしくお願いいたします。

 今回のメンバーは、大崎梢(おおさきこずえ)さん、近藤史恵(こんどうふみえ)さん、福田和代(ふくだかずよ)さん、松尾由美(まつおゆみ)さん、松村比呂美(まつむらひろみ)さん、そして私、矢崎存美(やざきありみ)の六人です。実力派ばかりです!(自分が入っていると思うとムズムズしますが! 私、今回のまとめ役なのです)

「嘘と約束」――なんてことのない言葉ですが、二つ並ぶととても謎めいて見えませんか? 嘘には真実があり、約束は破られることもある。嘘をついたことのない人も、約束をしたことのない人も、おそらくいない。あなたがついた嘘、あるいは隠された真実、そして破られた約束と守るべき約束が、この本の中に描かれているかもしれません。

 で、アミの会(仮)とはいったいなんぞや――と思う方もいらっしゃるでしょう。端的に言えば、短編好きの女性作家が集まって、二〇一五年に結成された会です。主にアンソロジーを出したり、女子会をしたり、と至ってフレンドリーな集まりなのですが、しかしてその実態は――去年の五月、青山(あおやま)での楽しいお茶会に迷い込んだホラー作家・井上雅彦(いのうえまさひこ)さんの言葉を引用いたします。

『優雅な女子会に見えるけれども、当代きっての「殺しのプロ」がせいぞろいですね』

 ホラーの名手にこんなことを言われてしまうとは! しかし「殺しのプロ」っていうのは本当のことなのですよね。だってミステリー作家ばっかりなんですもの。あ、私の本職はファンタジーものなんですけど、一応書いたことあるしね!

 そんな殺しのプロたちが丹念に描いた「嘘と約束」の物語、ぜひご堪能ください。

光文社 小説宝石
2019年5月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

光文社

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