『CHOOSE CIVILITY 結局うまくいくのは、礼儀正しい人である』
- 著者
- P・M・フォルニ [著]/大森ひとみ [監修]/上原裕美子 [訳]
- 出版社
- ディスカヴァー・トゥエンティワン
- ISBN
- 9784799325605
- 発売日
- 2019/09/27
- 価格
- 1,650円(税込)
ビジネスでうまくいくのは「礼儀正しい人」。礼節で人生のクオリティを上げる
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
礼儀正しさにはどういう意味、どのように身につければいいのか?
礼節によって、人生のクオリティはどのように上がるのか?
他にも、周囲の人との接し方や、無礼な態度を取られたときの対応法なども気になるところ。
『CHOOSE CIVILITY 結局うまくいくのは、礼儀正しい人である』(P・M・フォルニ 著、大森ひとみ 監修、上原 裕美子 訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、そうした疑問について答えるために書かれたものなのだそうです。
本書を書いたのは「礼節は人生のクオリティを高めるすばらしく効果的なツールだ」という胸踊る気づきをお伝えし、共有したいと思ったからです。
多くの読者にとって、本書が提示するのは、わかりきった内容ばかりかもしれません。しかし、すでによく知っていること、もともと大事にしている考え方であっても、あらためて確認すれば、その規範を守ろうという意識が強くなります。
わかっていることを再確認するのは、新しい視点を持つのと同じくらい重要なことなのです。(「はじめに」より)
そんな本書の第2章「礼節のルール25」のなかから、2つのポイントをピックアップしてみたいと思います。
周囲の人に関心を向ける
「ふたり以上が集まり、お互いに関心を示せば、そこにかならず人間的な瞬間が生まれる」ーーエドワード・M・ハロウェル(精神分析医)
日々の生活のなかで、周囲に関心を向けることなく、やり過ごしてしまうことは少なくありません。たとえば多くの人は、出勤途中の出来事にはめったに気をとめないでしょう。
しかし、いつでも“初心者の目”を維持していたいものではあります。著者いわく、周囲に関心を向けるというのは、自分中心の意識から脱却すること。
それは、「あなたは関心を向けられる価値がある人です」と相手を承認することでもあるそう。
また、周囲に関心を向ければ、周囲の出来事に自分がどんな反応をしているか、意識できるようにもなるのだといいます。
たとえば誰かにひどいことばを投げかけられ、怒りの気持ちがふくらむのを感じたとします。
そんなときに大切なのは、そのまま怒りを爆発させず、「その怒りは正当なのか」「過剰反応ではないか」「あとで後悔しないか」というように、意識的に考えてみること。
同じように、友人から「仕事の推薦状を書いてほしい」と頼まれたにもかかわらず、なんとなく気が進まなかったとしましょう。
だとしたら行動を起こす前に、「自分がなぜそんなふうに感じるのか」を意識してみるのが賢明。
関心には、外向きと内向きの二種類があるそうです。そこで、世界に関心を向けると同時に、自分の思考にも関心を向けるべき。
その過程を通じ、人は自分の真価を発揮し、人生を充実させていくものだというのです。(40ページより)
人の話をきちんと聞く
「現代の生活で生じる衝突の大半は、ひとつの不幸な事実で説明できる。“誰も他人の話をきちんと聞いていない”という事実だ」ーーマイケル・P・ニコルズ(心理学教授)
“人の話を流して先へ進む”というケースは、ことばのやりとりにおいて発生しやすいもの。友だち同士の会話でも、そんなことになってしまいがちです。
このことについて著者は、人の話をきちんと聞くことができないのは、相手に意識を集中せず、自分の欲求だけに意識を向けているからだと指摘しています。
つい人の話を遮ってしまうのも、それが理由だというのです。
自分にスポットライトを向けたいあまり、黙って聞いていることができず、無作法にも相手を舞台から追い出そうとしてしまうということ。
それはナルシシズムのなせる技であり、パワーゲームでもあるといいます。会話の流れをコントロールすることで、自分が主導権を握ろうとしているわけです。
また、相手の話の途中で気が散ってしまうのも、会話を遮るのと同じ。たとえ相手が最後まで話し終わっていたとしても、充分な反応をせず、自分の話題に飛びついてしまうべきではないといいます。
いまこの瞬間に集中すべき意識を自分の過去の経験に向けてしまうと、人の話をきちんと聞くことは不可能になります。
そこで聞き上手になるために、次の3つのポイントを押さえるべき。
1:自分の口を閉じている
2:短くあいづちを打つ
3:質問で会話を引き出す
(54ページより)
それぞれについて、詳しいコツを確認してみましょう。
1:自分の口を閉じている
聞くときは、聞く意思をはっきり持って聞くこと。意識的に「聞くこと」そのものを目的にするという姿勢です。
そこで、「私はいま、話を聞いている。いまは純粋に話を聞くための時間をつくっているのだ」というように自分の胸に呼びかけることが大切。
そして、まずすべきは黙って聞くこと。
耳を傾ける力とは、誰かが喋っているあいだに口を閉じている力。沈黙の価値を再確認することが大切だということです。そして真剣に聞いていることを示したい以上、気が散る原因は取り除くことも必要。
テレビを消し、携帯電話もオフに。次の用事や約束もいったん頭からどけ、いまの瞬間に集中することが目的だということを忘れないようにするべきなのです。
2:短くあいづちを打つ
自分が真剣に聞いていることを相手にわかってもらうために、目を見て、ところどころで相槌を打ちながら話を聞くべき。
「なるほど」「そうですね」「わかります」「それは知りませんでした」など短く合いの手を入れ、ときに相手が話した内容を自分のことばで言い換え、要点を理解したと伝えるわけです。
3:質問で会話を引き出す
協力的に聞くとは、話を整理し、話に形や方向性を与える手伝いをしつつ、表面的なことばだけでなく、ボディランゲージも含め、相手が本当に言いたいことを理解していくこと。
そのため適切な質問をする必要がありますが、その際には「はい/いいえ」で答えられる質問ではなく、「その点はどう思う?」「ほかの選択肢はなにが考えられる?」「なにがあったら助けになると思う?」など、会話を引き出す質問をすることが重要。
自分の好奇心を満足させるのではなく、相手が話のポイントをはっきりさせられるように質問すべきなのです。(52ページより)
著者がいうように、書かれていることはたしかに「わかりきったこと」なのかもしれません。
しかしそれらは往々にして、「忘れてしまいがちだけれど、大切なこと」でもあるはず。
つまり原点に立ち返るという意味において、本書には価値があるのだと思います。
Photo: 印南敦史
Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン