<東北の本棚>10人の功績簡潔に解説
[レビュアー] 河北新報
かつて仙台藩が領域としていた岩手県南と宮城県は、数々の偉人を輩出している。名前は聞いたことがあっても、どんな偉業をなしたのか説明できない人も多いのではないだろうか。本書はそんな人に救いの手を差し伸べる。
日本史の教科書に載っているビッグネームから知る人ぞ知る地元の名士まで、両県出身の政治家や実業家、学者ら計10人を取り上げた。一人につき10ページ程度で、功績や苦労をコンパクトにまとめている。
江戸末期、仙台市大町の小間物商「紅久」に生まれた4代目八木久兵衛。仙台みその製造や国鉄株で財をなし、仙台市街西側の越路山を買い取った。現在の八木山だ。
5代目久兵衛は山へ向かう幹線道路やつり橋、高台には野球場や遊園地、公園を開発し、完成後は宮城県と市にそっくり寄付。市動物公園をはじめ、一大レジャースポットの礎を築いた。
奥州市水沢出身の政治家斎藤実(1858~1936年)は日清戦争後、激動の極東情勢下で海軍大臣に就任。朝鮮総督として手腕を振るい、首相まで上り詰めた。「兵学寮時代に身に付けた英国流の考え方や態度が第二の天性になった」と著者は解説する。
著者は一関市出身で仙台郷土研究会に所属。住宅問題評論家の顔も持つ。
本の森022(293)1303=880円。