沈没船の発掘・研究を行う考古学者の日常とは? 丸山ゴンザレスが聞いた、海に眠る船を調査するロマン

対談・鼎談

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沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う

『沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う』

著者
山舩 晃太郎 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784103541912
発売日
2021/07/15
価格
1,595円(税込)

書籍情報:openBD

山舩晃太郎×丸山ゴンザレス・対談「ロマンは現場で待っている!」

[文] 新潮社


山舩晃太郎さん(左)と丸山ゴンザレスさん(右)

世界の海で沈没船の発掘・研究を行う水中考古学者の山舩晃太郎さんが、憧れの「危険地帯ジャーナリスト」丸山ゴンザレスさんと初対面。大学で考古学を学んだ丸山さんと、「考古学あるある」から、トレジャーハンターの存在、そして海外での食事情まで、縦横無尽に語り尽くした。

山舩晃太郎×丸山ゴンザレス・対談「ロマンは現場で待っている!」

丸山 『沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う』を読んで、「山舩さん、すげぇな」と思いました。海外で調査するってこと自体、かっこいいですよね。僕は國學院大學で考古学を学んだ“考古学者崩れ”の情報屋ですが、「大学で考古を学ぶなら、こっち(海外)だったな」というのが正直な感想です。

山舩 私、丸山さんの大ファンなんです。『クレイジージャーニー』でスラム街に取材に行く様子を見たり、ご著書を読んだりして、「丸山さんがやっていることは文化人類学そのものだな、すごいな!」と感じています。

丸山 僕はいわゆるジャーナリズムを学んだことがなくて、取材も自己流なんです。國學院大學って少し特殊で、神主をやりながら考古学の研究をしている先生や、授業よりも酒の席でよく会う先生もいました。そんな環境で身につけたスキル、遺物へのアプローチや、現地での聞き取りのノウハウみたいな考古学的な考え方をベースに取材をして物を書いている。グローバルに活躍している山舩さんに響いたなら、とても嬉しいです。

山舩 「現地の文化を理解する」という点は考古学も文化人類学も、丸山さんの取材も同じです。僕や、僕の友人の文化人類学者がやっていることと同じだな~と思いながら、番組を見ていました。

丸山 実は僕、学部2年生の頃、専攻を決める面接で「なんで考古学なの?」って聞かれて「『インディ・ジョーンズ』が好きなんです」って言ったら、「お前もか……」という反応をされたんです。「これはヤバい」と思って「『MASTERキートン』も読んでます!」とアピールしたら、「あんなかっこいい考古学者はおらん!」とさらに怒られた(笑)。でも、エンタメ作品から考古学の世界に入ったし、実際に冒険もしたいんですよ。山舩さんも『インディ・ジョーンズ』が好きだそうですね。

山舩 はい、大好きです。考古学は本当にロマンにあふれた学問ですけど、学者自身がそう言ってはいけない雰囲気がありますよね。

丸山 あります、あります。1000年前の物が土の中から出てくるって、それだけでワクワクするじゃないですか。しかも山舩さんは、「水中考古学」ですから、発掘現場はもちろん水の中。発掘していて、興奮で震える瞬間ってありますか?

山舩 やっぱり一番最初の発掘が面白いんです。海底の砂の中から、船体の木材が出るか出ないかのタイミングですね。興味のない人から見たら単なる木片ですが、私は船の構造が大好きなので、それが出てくると、もう……。

丸山 昔の船って、今で言うところの飛行機や宇宙船ですもんね。当時の最先端技術の粋を集めた物だから。

山舩 そうなんです。古代エジプト時代から、ヴァイキング、大航海時代……と世界史の大きな流れの中で、人が移動する時に使った最新機械が船です。コロンブスなんて、本当に新大陸があるか分からないのに冒険の航海に出た。それによって植民地支配が引き起こされたという負の面もありますが、冒険家たちのストーリーの上に私たちは今、生きているんです。……ともっともらしく言いましたが、とにかく帆船はかっこいい! それに尽きます。

丸山 動機は、ごちゃごちゃ理由をつけず、シンプルな方が良いですよね。面倒くさくなった時に「本当に知りたくないの?」と自分に問い直せる。

山舩 そうだと思います。私は電車オタクの「鉄ちゃん」と同じなんですよ。ただただ楽しいから10時間くらい文献を読んでいるだけなのに、「研究しているね」と褒めてもらえる。学者になれてラッキーだと感じます。

丸山 その感覚、すっごく分かりますね。僕も、何週間も海外のスラム街をウロウロして、見たり聞いたりした情報を日本に持って帰ってきて価値づけをする……という仕事をしています。こんなことを商売にできるって幸せだなと思います。「好き」が高じて仕事となっているのは、山舩さんも私も同じかな、と思いました。

新潮社 波
2022年2月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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