『沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う』
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山舩晃太郎×丸山ゴンザレス・対談「ロマンは現場で待っている!」
[文] 新潮社
遺跡の持つ本当の価値
丸山 ご専門の大航海時代のスペイン・ポルトガル船以外の時代や国の船の発掘や調査にも沢山参加されていますよね。本の中では、ミクロネシアの戦争遺跡にも触れられていますが、戦争遺構保護の活動は、今後もやっていくつもりですか?
山舩 そうですね。本に書いたミクロネシアのプロジェクトは、もともとユネスコのチームに誘われて参加しました。第二次世界大戦時の沈没船は、船内にまだ燃料が残っているんです。月日を経て船体が劣化して流れ出すと、周辺の景観が損なわれてしまいます。ミクロネシアは観光で成り立っている国ですから、大問題です。また、戦時中に現地では日本軍の駐留によって食糧の徴収による飢餓が発生した歴史もあります。日本人で、技術的にも貢献できるのであれば、積極的に携わっていかないと、と思います。
丸山 ご自身のナショナリティについては、海外に出てから意識するようになったんですか?
山舩 はい。世界的な視点からも考古学を考えられるようになりました。私は丸山さんほど危険な場所には行っていませんが、ジャマイカやトバゴなど、まだまだ貧しい国の現場に行って感じるのは「考古学は金持ちの国の道楽だ」ということです。でも、貧しい国にだって、歴史と遺跡は絶対にある。アイデンティティを育てるためにも歴史はとても重要です。それに遺跡もやっぱり単純にかっこいいんです! だから、その感動を残しておきたい。将来は、遺跡の保護団体を作りたいです。
丸山 そこに遺跡があったという記録は後の世代へ残せますもんね。それに、世界中、どこに行っても博物館はありますよね。やっぱり人間には「過去を知りたい」という欲求が本能レベルで備わっているんだと思います。
行き着く先はロマン
山舩 私はとにかく船の考古学が楽しいってことを皆さんに伝えたいんです。今、一人で地下アイドルを応援しているような状態なので……。水中考古学の魅力を共有できる仲間がもっといたら、と思います。フィクションじゃなくても、考古学はロマンにあふれている。それを知ってほしいですね。
丸山 少なくとも、山舩さんは一人じゃないですよ。僕が発掘現場まで応援しに行きます。
山舩 心強い! 今度、モンゴルの湖で水中ドローンを使って調査を行う予定なんです。モンゴルは内陸国なので、湖信仰が強い。湖に色々大切なものを投げ入れる風習があったのですが、ロシアのトレジャーハンターがそれを奪っていくという問題が起きているんです。丸山さんは考古学の視点も持ったジャーナリストですから、ぜひ現場を見て取材してほしいです。