沈没船の発掘・研究を行う考古学者の日常とは? 丸山ゴンザレスが聞いた、海に眠る船を調査するロマン

対談・鼎談

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沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う

『沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う』

著者
山舩 晃太郎 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784103541912
発売日
2021/07/15
価格
1,595円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

山舩晃太郎×丸山ゴンザレス・対談「ロマンは現場で待っている!」

[文] 新潮社


山舩晃太郎さん

盗掘とコレクション

丸山 山舩さんは本の中でトレジャーハンターによる被害について書かれていました。ぜひ聞きたいんですけど、沈没船からサルベージする民間人は、さまざまな機関が把握しているよりも、実態としては多いんですか?

山舩 うーん、これまでのトレジャーハンターは、船全体をダイナマイトで破壊し、金属探知機で金貨なんかを探し出す、という方法を取っていましたが、丸山さんも本に書いているように、割に合わないんですよ。金目のものは、沈没した直後に奪われているケースも多い。それで今は「投資詐欺」に移行していますね。例えば、「南米沖に何百億円の価値のあるものが埋まっています。数億円あればサルベージできます。余剰分は出資者に配当します」と、出資金を集めてトンズラするんです。

丸山 盗掘については、そういう変化はあるだろうなと思っていました。ちょっと蛇足ですが、偶然海岸に流れ着いた遺物を一般の方が拾ってコレクションするのは許せます? イギリスのテムズ川なんかだと、実際に趣味としてやっている人がいるんですが。

山舩 なるべく自治体や博物館に報告をしていただきたいのですが、流れ着いた物だったらOKです。確かに、沈没船の中に残されている積み荷が、船体内のどの位置から出土したかは大切な情報です。ですが、故意に持ち去ったのではなく、自然の力で流出してしまったのならば、特に問題視はしません。遺跡を破壊するか、意図的に持ち出したか、がポイントですね。

丸山 少し話が変わりますが、現代の車を将来の人類が発掘したら、21世紀の文明について推察できることが多いと思うんですよ。タイヤの形状からフラットな道路が存在したこと、燃料タンクの大きさから移動可能距離などですね。船一つからも、そういう風に過去の文明を復元できますか?

山舩 船からだけではできないかもですね。帆やロープを見れば造船技術の水準は分かりますが……。古代船だったら、木の切り方から、どのように自然を活用していたのかは分かります。航海器具を見れば世界をどのように理解していたかも読み取れますが、それが限界でしょうか。積荷まで出てくると、かなり当時の文明を推察できます。各地から品物が港に集まり船に載せられるので、当時、何が流行していたのかや、敵対していた文明同士も実は食物の貿易をしていた……なんてことも分かります。

丸山 なるほど!

新潮社 波
2022年2月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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