『100歳まで生きてどうするんですか?』
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【聞きたい。】末井昭さん 『100歳まで生きてどうするんですか?』
[文] 三保谷浩輝
■ストレスフリーで楽しく
「これまで自分の年をあまり意識しなくて、気が付いたら70歳を過ぎていた。浦島太郎みたいですね」
そこで、来し方を思いながら老後の楽しい生き方、いつか来る死とはどんなものかなどを考えた。
58歳のときに見つかった大腸がんは手術で事なきを得たが、内視鏡検査の全身麻酔で「意識がスーッとなくなっていく時の気持ちよさ」に「死ぬ時はこんな感じなのかな」と極楽浄土を夢見る。また、浮気相手とダイナマイトで心中した母親、風呂場で歌の練習に気張りすぎてポックリ逝った父親らの「ろくでもない死に方」を笑い、自身の行く末を想う。
一方、「すべてが、思ってもみなかったこと」という人生。前半は巨額の借金を抱え、一発逆転のはずのギャンブルでも負ける日々だったが、50歳で再婚した「美子(よしこ)ちゃん」との出会いでギャンブルをやめ、「本当の意味で生き返った」。
がんをきっかけに体に気を使うようになり、「心身の健康法のお勧めは家事」とも説く。「食器洗いで流しのステンレスまでピカピカに磨くと楽しいし、乾いて山積みの洗濯物を1枚ずつたたんでいると心が無になるよう。家事も運動で、痛かった腰やひざも治った」
今や「この状態で100歳まで生きられるなら生きてみたい」の心境。「自分への問いでもある」という本書のタイトル。その答えは「楽しく生きる」で、そのために「ストレスを排除すること」を心がける。
「世のため人のためにとか、目標や夢を持つとストレスになる。ストレスフリーなら自己肯定感が強くなり、ポジティブになれる。自分が楽しければ、周囲にも波及しますしね」
そして、本書の“効能”をこう語る。
「コロナ禍で、みんなストレスを抱えている。この本で笑って、気持ちを楽にしてもらえたらうれしい」(中央公論新社・1650円)
三保谷浩輝
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【プロフィル】末井昭(すえい・あきら) エッセイスト。昭和23年、岡山県生まれ。50年、現在の白夜書房設立に参加。編集者として「パチンコ必勝ガイド」などの雑誌を創刊。平成24年、退社し執筆活動に入る。26年、『自殺』で講談社エッセイ賞受賞。