【聞きたい。】播田安弘さん 『日本史サイエンス〈弐〉邪馬台国、秀吉の朝鮮出兵、日本海海戦の謎を解く』

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日本史サイエンス〈弐〉 邪馬台国、秀吉の朝鮮出兵、日本海海戦の謎を解く

『日本史サイエンス〈弐〉 邪馬台国、秀吉の朝鮮出兵、日本海海戦の謎を解く』

著者
播田 安弘 [著]
出版社
講談社
ジャンル
歴史・地理/日本歴史
ISBN
9784065280829
発売日
2022/05/19
価格
1,100円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【聞きたい。】播田安弘さん 『日本史サイエンス〈弐〉邪馬台国、秀吉の朝鮮出兵、日本海海戦の謎を解く』

[文] 寺田理恵(産経新聞社)


播田安弘さん

■「数字で解けば歴史変わる」

勝因は本当に「東郷ターン(敵前大回頭)」と「丁字戦法」だったのか?

小国日本が世界最強の露バルチック艦隊を撃破した日本海海戦(明治38年)。その「神がかり」的勝因に疑義を抱き、船舶設計技術者としての工学的視点で検証を試みたのが本書だ。

日露戦争の帰趨(きすう)を決した海戦で、東郷平八郎率いる連合艦隊は敵の射程内に近づく中で方向転換。敵の進路をさえぎる丁字型になるように進み、敵先頭艦に砲撃を集中させる戦法によって壊滅的打撃を与え、奇跡的勝利を収めたとされる。

だが、「丁字型は分かりやすいが、発砲したときは並航(へいこう)になっている」とみた。勝因を巡る通説には多くの研究者らが疑問を呈してきたが、本書の注目すべきところは、自ら仮説を立て、両艦隊を数字で比較する指標を作り出した点だ。

「日露の艦隊を何で比較すれば日本が勝った結果になるか」を考えた。砲撃の命中率は日本が高い。ロシアは大口径砲を積んだ戦艦が多いが、欧州から回航した影響で速度が低下していたとみられる…。そこで、速度を重要ファクターと仮定し、独自の指標として「艦の戦闘力」を「砲力(火薬量)+艦の運動エネルギー」と定義。公式を踏まえつつ、シンプルな計算式を作った。

算出結果は日本の連合艦隊が大きく上回り、勝つべくして勝ったと結論付けた。技術者としての経験を生かした。「新しい装置や船を宣伝するため、有利な数字で指標を作ってきた。リーズナブルであれば納得してもらえるし、おかしいという人もいる」と話す。

歴史の検証を始めたきっかけは、神風が吹いたとされる「蒙古襲来」の解析だった。蒙古軍の陣容や上陸地点を割り出し、通説を覆す結果を得て前著をまとめた。「物量や時間軸で解けば、今までの歴史は変わるのでは」。シリーズ累計10万部を達成、80歳とは思えない活躍ぶりだ。(講談社ブルーバックス・1100円)

寺田理恵

   ◇

【プロフィル】播田安弘(はりた・やすひろ) 船舶設計技術者。昭和16年、徳島県生まれ。三井造船(当時)を定年後、3Dイラストレーション制作工房「Ship 3D Design 播磨屋」主宰。映画「アルキメデスの大戦」(令和元年)の製図監修も。

産経新聞
2022年7月3日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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