警察学校が舞台の「教場」シリーズで知られる著者の最新作。
脳外科医の尾木はクモ膜下出血で緊急搬送された死刑囚を手術するが、尾木の両親を殺害した強盗殺人犯だと術後に知る。無実を主張する死刑囚を前に、尾木と看護師の妹は事件の真実と向き合う。
兄妹は、犯罪被害者として死刑囚を激しく憎しみながら、医療者としては手術で救いリハビリを通して回復をサポートしているのが死刑台で消える命だという矛盾に煩悶(はんもん)する。
一人の死刑囚の命を見つめる医師、刑務官らの姿を通し、人の命の軽重を巡る倫理観が問いかけられる。(角川書店・1870円)
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2022年10月2日 掲載
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