『阪急電車』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
阪急今津線に毎年通ったそのワケは……
[レビュアー] 北上次郎(文芸評論家)
書評子4人がテーマに沿った名著を紹介
今回のテーマは「鉄道」です
***
阪急今津線は、宝塚駅から西宮北口駅までの8駅を含む支線である。阪急電鉄は日本を代表する大手私鉄のひとつだが、阪急今津線の全国知名度は高くない。その今津線にこの20年、年に1~2回は確実に乗ってきた。合計で30回以上は間違いなく乗っている。東京生まれで東京育ちの私が、なぜ今津線に定期的に乗っているかというと、この線の真ん中あたりに仁川駅があり、そこから徒歩数分のところに阪神競馬場があるからだ。
最初の10年は梅田に宿泊し、そこから仁川まで行っていたが、後半の10年は三宮に宿泊し(西宮北口から神戸三宮までは阪急神戸線)、そこから通っていた。西宮北口から、梅田までと三宮までの所要時間にそれほどの差がないことに気づき、ならば空いている線のほうがいいと変更したのである。梅田から行こうと、三宮から行こうと、最後は阪急今津線に乗ることに変化はないので、この今津線をずっと愛用してきた。
仁川から宝塚駅まではすぐなので、そちらに足を延ばし、通りを隔てたところにあるJR宝塚駅にひっぱりだこ飯を買いに行ったこともある。淡路屋の超有名駅弁だが、JR宝塚駅の売店にも時々やってくるという話を聞いていたからだ。
この阪急今津線を舞台にした有川浩『阪急電車』を読むと、コロナ禍で、阪神競馬場に行く機会を失っているので、ひたすら懐かしいものがこみ上げてくる。また行きたいなあ。