『村田エフェンディ滞土録』
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【気になる!】文庫『村田エフェンディ滞土録』
[レビュアー] 産経新聞社
舞台は19世紀末、オスマン帝国末期の激動の帝都イスタンブール。留学生の村田は、英国人女性が営む下宿屋で住人のドイツ人やギリシャ人と友情を育む。
使用人のムスリムも含め母語や宗教が異なる5人は、互いの文化や信仰を尊重しながら暮らしている。遺跡の発掘現場を訪ねたり雪合戦をしたりと、穏やかな日々の中にも、不穏な気配が漂う。村田の帰国後、革命と戦争が起き-。
平成19年に角川文庫から刊行された青春小説の再刊。取り戻せない日々が輝きを放つ。「文明の十字路」と呼ばれる街の混沌(こんとん)とした雰囲気も魅力的だ。(梨木香歩著、新潮文庫・649円)