『ラテンアメリカン・ラプソディ』野谷文昭著
[レビュアー] 産経新聞社
ラテンアメリカ文学の翻訳を数多く手掛ける著者によるエッセーや批評を収める。文学作品にとどまらず映像作品も論じている。
コロンビア出身のガルシア=マルケスの『予告された殺人の記録』で描かれる「宿命」と共同体の集合的意識の関係。ペルーのバルガス=リョサが『ケルト人の夢』で紡いだ植民地主義との戦い…。これらの作品に、欧米への対抗心、敗北を恐れない勇気を読み取る著者は「生を感じさせ、パワーがある。それでいて繊細で、微かな憂いに満ち、そして何より面白い」とつづっている。混沌(こんとん)と熱に彩られた文学、文化の深みを堪能できる。(五柳書院・3630円)