『おじさんLINE』が批判される理由。LINEで避けるべき5つの「失礼なこと」
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
世の中には、そして自分自身の中にも、多種多様な「失礼」が存在しています。
うっかり失礼の加害者にならないためには、どうすればいいのか。次々と迫りくる失礼の被害を最小限に抑えるには、どんなノウハウや心がけが必要なのか。
そんなことを考えるために、失礼は承知で「失礼研究所」を個人的に設立いたしました。(8ページより)
『失礼な一言』(石原壮一郎 著、新潮新書)の冒頭にはこう書かれています。たしかに、「失礼のタネ」は世の中のいたるところに落ちているもの。だからこそ、これは意義ある試みであるといえそうです。
ただし著者および失礼研究所は、「じつはこれは失礼な行為である」「厳密にはこれも失礼にあたる」という具合に、重箱の隅をつついて「失礼」をつくり出そうとしているわけではないのだそうです。
あくまで目的は、失礼の基本を押さえつつも、自分と周囲が日々を平和に穏やかに過ごすために、失礼とどうつきあっていくかを考えていくこと。
「日常生活」から「属性」「ライフスタイル」など、さまざまな観点から「失礼」について考察した興味深い内容。きょうは2「言葉をめぐる失礼」のなかから、LINEに関するトピックスを拾い上げてみましょう。
LINEで評判を落とす5つの方法
国内の利用者数が約9300万人におよぶという「LINE」のことを、著者は「便利だけどちょっと怖い」と表現しています。
最近ではビジネスの場面でも欠かせない通信手段となりつつありますが、誕生してまだ10年ちょっとでしかなく、明確なマナーは確立されていないに等しいから。
実際のところ、いまもあちこちで、意外な失礼や戸惑いが生み出されています。ということでここで著者は、「ビジネスシーンでLINEを使う場合に『それをやったら自分の評判を落とす』とされていること」を挙げているのです。確認してみましょう。
何時でもお構いなしに送る
送る側には「忘れないうちに」という思いがあるのでしょう。しかし、そうはいっても深夜に仕事のLINEが届くのは、部下にとっては恐怖であるはず。したがって、「電話をかけてもいい時間帯」を目安にしましょうと著者は述べています。
長文で込み入った内容を送る
LINEは、長文にする必要があるような話題には不向き。そしてもちろん、大事な資料を送るのも避けるべき。
そもそもタイトルがないので、あとから探しづらくて不便です。それに、相手の考え方によっては「セキュリティ意識が低い」と思われる可能性もあります。
おちゃらけたスタンプを送る
以前は「ビジネスシーンでスタンプはタブー」とされていたものの、LINE利用者の増加に伴って最近では「まじめなスタンプならOK」という認識が浸透しつつあります。
ただし、スタンプの連投はやめておいたほうがいいようです。
誰だかわからない登録名にする
仕事の緊迫した連絡が「ピヨちゃん」みたいな登録名で届いたら、ちょっとイラッとします。狙いすぎたプロフィール(「さすらいの吟遊詩人」みたいなの)も、失礼というより自分が恥ずかしいかも。(53ページより)
たしかにおっしゃるとおり。同じことはメールアドレスにもあてはまりそうですね。
最初に定型の挨拶を書く
一般的に、LINEでは「いつもお世話になっております」などの挨拶は不要。前置きが長いと、スマホの通知に文章の冒頭がチラッと表示された際、いちいち開かないと内容を理解することができません。
しかも開いて既読にしてしまうと、「早めに返信しなきゃ」というプレッシャーを感じることにもなるはず。それは、忙しいタイミングであればなかなか迷惑なことでもあります。
なお、読んでも返信しない「既読スルー」の問題に関しては、送った側が神経質になりすぎるほうが失礼。
相手が読んですぐに返信できる状況だとは限らないからです。しばらくたっても反応がないからといって、「おーい、返事まだ?」などと催促すると、間違いなく相手をムッとさせてしまうはず。返事が来なければ気にもなりますが、全力でこらえる必要があるわけです。(52ページより)
「おじさんLINE」問題
「LINEがらみの失礼」を考えるうえで外せないのが、数年前から話題になっている「おじさんLINE」問題。
ピンとくる方もいらっしゃるでしょうが、おじさんが若い女性に送るLINEにはなぜか共通点があり、それが失笑(憎悪?)の対象になっているというわけです。
以下は、著者によるその例。
<おはよう☀︎😊ゆうこチャンは、もう起きたカナ? おじさんは今日も仕事です(/ _ ; )シクシク…
寒いから、ゆうこチャンとしっぽり♨︎にでも行きたいナ❤︎ ナンチャッテ(^^; じゃあね〜(^o^)/>(55ページより)
こうして引用しているだけでイラついてきますが、たしかにこういうLINEを送りたがるおじさんはいるものです。ちなみに若い女性の間では、同性の友だちとこの手の文面をやりとりして笑い合う「おじさんLINEごっこ」という遊びがあるのだとか。
などと聞くと「失礼だ!」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、本当に失礼なのは、親しくもない相手にこうした馴れ馴れしいLINEを送る側。
「おじさんLINE」が批判されるのは、そこに不愉快な失礼が凝縮しているから。読みづらいだけの絵文字や顔文字の多用&不自然なカタカナの混ざり具合、返事のしようがない一方通行の言いっ放し、距離感を無視した下心の押し出しっぷりなど、あまりにも自分本位。
たぶん「若い女性にLINEを送る」という時点で、すっかり舞い上がって、タガが外れてしまうのでしょう。恐ろしいことです。(55〜56ページより)
だからこそ、うっかりやらかさないように肝に銘じるのは当然の話。それに、どういう相手にどのようなLINEを送るにせよ、相手を不快にさせない配慮は欠かせません。そこで著者は、「『おじさんLINE』を反面教師にさせてもらいましょう」と提案しています。(54ページより)
人気コラムニストとして知られる著者の文章はユーモラスにして洒脱。肩の力を抜いて読み進めることができるので、楽しい週末のお供として最適だと思います。
ゆるやかに「失礼」を避けて生きていくため、「楽しみながら」参考にしてみてはいかがでしょうか?
Source: 新潮新書