『幻の麺料理』
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『幻の麺料理 再現100品』魚柄仁之助著(青弓社)
[レビュアー] 池澤春菜(声優・作家・書評家)
2013年、和食がユネスコ無形文化遺産に登録された。でもわたしたちが普段食べているのは本書の言葉を借りるならば「日本独自の進化を遂げて生み出された」日本食だ。
カレーうどん、ナポリタンにソース焼きそば。今わたしたちが美味(おい)しい日本食を食べられるのは、そこまでの道筋に、先人たちのたゆまぬ創意工夫と試行錯誤があったからこそ。この本に残されているのは、そんな黎明(れいめい)期の屍(しかばね)たち……もとい、試作品たちだ。いやもうなんでその組み合わせ? どう考えても失敗でしょ、って調理法がいっぱい。その殆(ほとん)どを実際に作って検証しているのに頭が下がる。
マカロニのおすまし。うなすぱ。スパゲティの卵寄せ。ラーメンおこしに、マカロニのかき揚げ、スパゲティの春巻き。極めつきはおせちスパゲティ。
残念ながら味の感想は妙なバランス、クドイ味、味気ない、必要性がない、とイマイチな物が多い。先人たちのチャレンジ精神と、進化の行き詰まりに消えていった数々の珍料理に思いを馳(は)せつつ、今ある美味しい麺料理を堪能したくなる一冊。