気づけば10年経っていた…を防ぐ「よい人生」のつくり方〜いますぐ職場と家庭で意識したいこと

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気づけば10年経っていた…を防ぐ「よい人生」のつくり方〜いますぐ職場と家庭で意識したいこと

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

健康で幸せな未来のために、今すぐ、たった一つだけ、「人生の選択」をするとしたら?

毎月の貯金額を増やす? 仕事を変える? もっと旅行をしようと決意する? 晩年に振り返ったとき「幸せな人生だった」と確実に思えるための、唯一無二の選択肢は何だろうか?(7ページより)

なかなか答えにくい問いではありますが、このことに関連し、 『グッド・ライフ 幸せになるのに、遅すぎることはない』(ロバート・ウォールディンガー、マーク・シュルツ 著、児島 修 訳、辰巳出版)の著者は「幸せな人生は、複雑な人生だ。例外は、ない」と断言しています。

幸せな人生は喜びにあふれている……けれど、試練の連続だ。愛も多いが苦しみも多い。それに、幸せな人生とは偶然の賜物ではない。幸せな人生とは、時間をかけて展開していく一つの過程だ。波乱、安らぎ、楽しさ、重荷、苦闘、達成、挫折、飛躍、それに恐ろしい転落がつきものだ。そしてもちろん、幸せな人生も必ず死を迎えて終わる。

陳腐な話に聞こえるのは百も承知だ。それでも、はっきり言おう。幸せな人生は楽な人生ではない。完璧な人生を送る方法など存在しないし、あったとしたら、ろくなものではない。

なぜかって? まさに困難や苦労こそが、豊かな人生――幸せな人生――をもたらすからだ。(9ページより)

つまり『グッド・ライフ』というタイトルは表面的なものではなく、バックグラウンドにこうした考え方があるわけです。

ちなみにそんな本書の内容は、「ハーバード成人発達研究」を中心とするしっかりとした科学的研究に基づいているのだとか。それは1938年に始まった桁外れの科学研究プロジェクトであり、あらゆる困難を乗り越え、現在も継続中なのだそうです。

きょうは「仕事」をテーマとした第9章「職場でのグッド・ライフ」のなかから、仕事を続けていくうえで意識しておきたいトピックに焦点を当ててみたいと思います。

職場での人間関係を豊かにするための5つの問い

「生き方を変える時間はいくらでもある、職場での生き方を改善し、仕事と家庭生活のバランスを改善する方法を考える時間もたっぷりある」。

著者によれば、そう考える人は少なくないのだそうです。「いまの大変な状況を切り抜けさえすれば、目の前の問題を乗り越えさえすれば、その問題について考える時間ができるだろう」と考えてしまいがちだということなのでしょう。

しかし現実的に、5年や10年などあっという間に過ぎていくもの。

たとえば著者の研究では、10年または20年ごとに個別の対面調査をしているのだそうです。ずいぶん長い感覚だなと思われるかもしれませんが、研究チームが対面調査を依頼するたび、被験者は「もうそんなに時間が経ったのか」と驚かれるそう。依頼を受けたことで初めて、「10年という時間は、瞬く間に過ぎ去った」と実感するわけです。

そんな話からもわかるように、「時間ならあとでとれる」と考えていると、ある日、残り時間などないことに気づく羽目になる可能性があるのです。そして、そのときにはすでに、あったはずの「いま」はとうに過ぎ去っていることでしょう。

そこで著者は、あす、目を覚まして職場に行ったら、次の質問に答えてほしいと記しています。

・職場で一緒にいていちばん楽しい人、大切にしたい人は誰か? その人のどんなところが自分にとって大切なのだろうか? その人に対してきちんと感謝を示しているだろうか?

・自分とは違うなと思う人(考え方や経歴、専門分野など)は誰だろうか? その人から何を学べるだろうか?

・職場で対立している人がいる場合、どうしたら対立を和らげることができるだろうか?

・職場に足りていなくて、もっとあってほしいと思う人間関係はどんなものか? こうした人間関係を増やし、豊かなものにするための方法はあるだろうか?

・職場の仲間を本当に理解しているだろうか? もっと深く知り合いたいと思う人はいるだろうか? どうすればその人に近づけるだろうか? 共通点がいちばん少ないと思う同僚を選び、その人がデスクに飾っている家族やペットの写真、職場で着ているTシャツなどを話題にして、話しかけてみてはどうだろう?(318ページより)

さらに、帰宅後に意識すべきこともあるようです。(317ページより)

帰宅後に意識すべきことは?

そして帰宅する際には、職場での出来事や気分が、自宅で過ごす時間に影響するかもしれないということを思い出すべき。もちろん、いい影響を与えることもあるでしょうが、もし不機嫌になっているなら気分転換をしておく必要があるということです。

たとえば帰宅前に10分か30分ほど、散歩や水泳をするのもいいでしょう。また帰宅後は、家族との時間を仕事に邪魔されないように、一定時間はスマートフォンの電源を切っておくのもいいかも。

仕事が嫌になるときは誰にでもあるもの。しかしその一方、仕事をしている時間は、人と交流できる大きな機会にもなります。事実、著者が研究を通じて対面してきた被験者のなかでとりわけ幸福度が高かったのは、(職種がなんであれ)仕事に満足しており、職場の仲間との関係が良好で、仕事と家庭生活とのバランスがとれていた人たちだったそう。

苦労と交渉を重ねてそうしたバランスを手に入れた人たちがほとんどだったといいますが、いずれにしても彼らは、仕事と家庭生活の双方が同じように重要だと理解していた人たちであったわけです。

大学の入学選考事務局に勤めていたエレン・フロインドは、2006年に次のように語った。「自分のキャリアを振り返ると、職務上の問題より、部下や周りの人にもっと気を配ればよかったと思うことがあります。私は自分の仕事が大好きでした。本当に。でも、気難しくて、せっかちで、要求の厳しい上司だったと思います。たしかに、仲間の気持ちをもう少し理解すべきだった、と思います」(319ページより)

人生は、朝、職場の入り口で私たちを待ってくれているわけではありません。運転手がトラックに乗り込むとき、道路脇に立っているわけでもなく、教師が授業の初日に生徒たちと会うとき、教室の窓からこちらを覗いているわけでもないでしょう。

重要なポイントは、仕事に勤む一日一日が、価値ある経験をもたらすということ。そして一日が人間関係を通して豊かになれば、それが「幸せな人生」につながるわけです。そう考えると、「仕事もまた、人生なのだ」という著者の主張にも納得できるのではないでしょうか?(317ページより)

幸せな人生を歩んでいくためには、まず、幸せな人生は目的地ではないと認識するべきだと著者は説いています。幸せな人生とは道そのものであり、道をともに歩く人たちそのものなのだと。したがって人生という道を歩みながら、注意を誰に、なにに向けるかを決めていくことが大切なのでしょう。

Source: 辰巳出版

メディアジーン lifehacker
2023年6月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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