『気のきいた会話ができる人だけが知っていること』
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気のきいた会話ができる人が上司・部下、知人としている「ちょうどいい雑談」のコツ
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
会話が得意になれば、人間関係がよくなります。人間関係がよくなれば、仕事や家庭が円滑になります。仕事や家庭が円滑になれば、自分に自信がつきます。自分がつけば会話が楽しくなり、人間関係は広く深くなり、人生は豊かになります。(「はじめに」より)
『気のきいた会話ができる人だけが知っていること』(吉田照幸 著、SB新書)の冒頭にはこうあります。たしかにそのとおりでしょうが、しかし会話は難しいもの。だから現実問題として、「伝えたいことが伝わらない」「話がかみ合わない」「なにを話していいかわからない」「沈黙が怖い」など、いろいろな悩みを抱えてしまうことになるわけです。
では、会話が弾まない理由はなんなのでしょうか?
TVディレクター、演出家、プロデューサーとして多くのヒット作をみ出してきた著者によれば、それは「情報だけ伝えれば会話が弾むというものではない」から。
SNSであれば、「美術館行った。人がいっぱいだったけど、いい展覧会だった」「知らなかった! 私も行ってみよう」というやりとりは10秒もあれば終わります。
しかし会話を楽しくするためには、その10秒を膨らませることが大切。「いい展覧会だった」のあとに、「私も行ってみよう」ではなく「どんな展覧会だった?」と質問すれば、会話の流れはまた違ってくるわけです。
得てして会話がうまくなることを、しゃべりがうまくなることと考えがちです。もちろん自分のしゃべりの向上も必要です。ただ、会話は相手がいます。気のきいた会話とは、いかに相手の心を開き楽しませるかに尽きます。(「はじめに」より)
相手の話が平坦で、そのまま会話が進んでいくのであれば、盛り上がるはずもありません。だからこそ、こちらが質問して引き出すことが重要。気がきくとは、自分でおもしろいことをいうだけではなく、相手に気を使える会話術を意味するわけです。
こうした考え方に基づく本書のなかから、第4章「気のきいた会話のルール シチュエーション別・実践編」に焦点を当ててみたいと思います。
<普段話さない人と2人で話す>聞くが8割。話すは2割
たまたま道で会った同僚と会社に行くとか、知り合ったばかりの人と帰りがけに一緒になるなど、仲がよいとまではいえない人と話す場面があります。そういうときは焦ってしまいがちですが、ひたすら聞きに徹するべきであるようです。
たとえば相手を笑わせようと自分の話をすれば、相手は笑ってはくれるかも知れません。しかし、だからといって相手がおもしろいと感じているとは限らないもの事実。1対1だから、気を遣って笑わざるを得ないというケースもあるわけです。
では、相手が笑っているときはどういうときかっていうと、自分の話をしているときなんです。もっと言えば、自分に興味をもってもらっているときなんですよね。
仕事のこととか、趣味のこととか、その人の得意ジャンルを質問してあげるほど、相手は楽しくなって、しゃべってくれます。
大切なのは、「聞くが8割、話すが2割」と思っておくこと。
つまり、こうした場合、笑わせようと考えないほうがいいってことです。(115ページより)
いつも会うわけではない人と2人で話す際には、相手も気を使っているもの。したがって、まずは相手に気を使わせないことが大切なのです。そして、「話が聞きたいです」という気持ちをもって、相手のことばに耳を傾ける。さらに、興味をもったことを質問する。それが大切であり、自分のことは「聞かれたら答える」程度で充分だということです。(114ページより)
<友人と雑談>「地味にハマっている」ことの話をする
長いつきあいだからこそ会話がなくなることがありますが、そんなときには「地味にハマっていること」の話をするといいそうです。
「実は、最近、『柿の種』を食べると止まらなくなってしまって。もう『柿の種』ばっかり食べちゃって」
から始めて、
「『柿の種』って、わさびとか、いろんな種類あるの知ってる?」
「でも、わさび味は、ちょっと分量が少ないの。『同じ値段だな』と思ってるかもしれないけど、きっとわさびの分、分量が少ないんだよ」
「『柿の種』をさ、どういうふうに食べる? やっぱり人によって個性があるんだよ。きっちり、あられとピーナッツを交互に食べるとかね」
(120〜121ページより)
こういう、どうでもいい話ができるのは、相手が親しい友人だからこそ。著者はそう述べています。
とはいえ、こういう話は日常の「どうでもいいこと」に対して鋭敏でないと出てこないものでもあるでしょう。そこで普段から、ちょっと気になったことを頭のなかやスマホにメモしておくとよいそうです。(120ページより)
<職場で愛されるコツ>上にはツッコんで、下にはボケる
会社で愛されるコツは、「上にはツッコんで、下にはボケる」だと思っています。
上司に「コイツ気のきいたやつだな」と思われたいのであれば、ある程度ヤンチャを装うことが必要です。会社なら、「言いたいことを言う」っていうスタンスですよね。
例えば上司が、「最近、うまくいかない」と言ったときに、「ゴルフのお話ですか? 夫婦関係のお話ですか?」と、ぱっと返せるか。そこで、「それは言うなよ」みたいに明るく言える上司ならいいんですが、ムッとされると終わりですよね。上司のタイプは見極めないといけません。(122ページより)
やや極端な例だという気もしますが、それはともかく、ひとつだけいえることがあるのだといいます。それは、上からかわいがられる人は、基本的には「ものをいう人」だということ。
しかも「ものをいう部下」をかわいがる上司は能力のある人であることが多く、おべんちゃらをいう部下ばかりをかわいがる上司は、基本的には能力に欠けるというのです。
もちろん、組織や上司との折り合いなど、いろいろな問題はあるでしょう。しかし、自分の意見を口に出そうとする人は、誰かが必ずみてくれているものだと著者。それは、上司にツッコミを入れる際にもあてはまるようです。(122ページより)
本書を読み終えたら、できるところから試してみてほしいと著者はいいます。その過程で相手の反応をよく観察していけば、「気のきいた会話」をゲームのように楽しめるようになるというのです。だからこそ、自分には無理だなどと思わず、気軽に試してみるべきではないでしょうか?
Source: SB新書