『天神さんが晴れなら』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
『天神さんが晴れなら』澤田瞳子著
[レビュアー] 産経新聞社
地元の言い伝えを書名の一部に用いた。京都で40年以上暮らす直木賞作家が、観光客と異なる着眼点で日常をつづった。それは自らが旅人になっても変わらない。国内のみならず中国やポーランドなどに出かけても、名所より現地の人との何気ない交流を記す。
コピー用紙の裏をメモ書きに利用することが大好きという。それは反故(ほご)紙の裏を利用した奈良時代の紙背文書と同じ-。こう、いにしえに思いを馳せるのは、歴史小説家の面目躍如か。食を巡る表現が豊か。バッグが壊れるほど小説を大量に持ち歩き、読んできた蓄積が執筆のエネルギーになっている。(徳間書店・1870円)