『頭が良くなっていく人のすごい習慣』
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誰でも脳の働きが活性化する!2つのシンプルな習慣
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
さまざまな場面において、「頭がよい」ことがよしとされる傾向はあるものです。しかし『頭が良くなっていく人のすごい習慣』(加藤俊徳 著、ぱる出版)の著者によれば、一般的に「頭がよいとはこういうことだ」と思われているタイプとは別の頭のよさがあるのだそうです。
問題は、頭がいいにもかかわらず、そういう人がなかなか評価されないこと。
しかも日本のように同調圧力が強い社会においては、地道に努力を重ね、もっと頭がよくなる方向へ進んでいるにもかかわらず、水を刺すような発言をする人が現れたりするもの。そのため結局は「やっぱり、自分はダメなのかな…」と余計な迷いや焦り、不安を感じ、立ち止まってしまうことになるというのです。
しかし、それでは建設的な方向に進むはずもありません。そして見逃すべきでないのは、人間の脳は必ずしもすべての部位が均等に発達するという仕組みにはなっていないことであるようです。
人それぞれに成熟した部位と未成熟な部位が必ずあって、そのコントラストが、その人の個性や特徴になります。
つまり、脳から見ると頭が良いもわるいもなく、ただ単に使っているかいないかの違いでしかありません。それをわたしたちが勝手に「頭が良い/わるい」とラベリングしているだけなのです。(「はじめに」より)
いわば自分自身の頭の状態は、いままで自分が知らず知らずのうちに重ねてきた選択=習慣の結果でしかないのです。しかし現実的に、「自分がなにを選択しているか」「脳のどの部位を使っているか」などをいちいち意識することはないものでもあります。そのため、「いつの間にか頭が悪くなった」と思い込んでしまうということのようです。
いいかえれば、「私は頭が悪いから〇〇できない」のではなく、「〇〇しないことを“無意識に”選んできたから〇〇が不得意になった」だけ。だとすれば、脳を“意識的に”使ってやれば頭がよくなるはず。それが脳内科医である著者の主張なのです。
とはいっても、それは決して難しいことではないようです。第4章「手軽にできる、頭を良くする習慣」のなかから、日常生活と連動した2つのヒントを抜き出してみましょう。
早めに起きて体を動かす
朝早い時間にベッドから出ると、早くから脳を覚醒させることができるため、午前中に集中して仕事に取り組むことが可能。すると時間に余裕ができるので、その時間を使ってビジネス戦略(計画)を立てることができるでしょう。
著者によればこれこそが、ウォール街のエリートたちが早朝からジムに行ったり、「お金持ちは早起きだ」といわれる所以。
逆に午前中から寝ぼけていると、時間にも脳にも余裕がなくなり、本番ギリギリのぶっつけ仕事になってしまいがち。そのため継続的に頭をよくしたいのであれば、脳に余力を持たせたほうが複雑なことを考えられるようになり、前向きな思考やプランニング、プロジェクト推進などの能力を鍛えることができるわけです。
脳を覚醒させるには、五感(視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚)への刺激が必要です。
起床後すぐにカーテンを開けて日光を浴びると、視覚系脳番地が目覚めます。
思い切り体を伸ばしてふーっと息を吐くだけでも、運動系脳番地にスイッチが入ります。シャワーを浴びたり、軽い体操をするのもおすすめです。(147ページより)
そうやって、少なくとも仕事を始める1時間前には、完全に眠気がない状態にすることが大切。ちなみに著者の場合は、シャワーと体操と1時間程度の散歩によって脳を覚醒させているそう。10時から診察が始まるので、そこから逆算して7時半から8時には家を出られるように起床時間を決めているのだといいます。
起床してから眠気がなくなるまでに必要な時間は人それぞれですが、大切なのは、自分にとってのベストを体感すること。その状態こそ、脳がもっとも健康で自然な状態だというわけです。(146ページより)
定期的に脳をリセットするために、内容の違う作業をする
似たような内容の仕事が何本も続くと、たっぷり休息したとしても頭がスッキリせず、疲れがとれないもの。それは、同じ脳番地を長時間使い続けたためなのだそうです。
したがってそんなときは、内容がまったく異なる作業を行い、別の脳番地を使うことが大切。そうすれば活力がよみがえるわけで、著者はこれを「脳番地シフト」と呼んでいるのだといいます。
もっとも手軽な脳番地シフトは、運動系脳番地を使うことです。
1時間に1回は立ち上がり、5分ぐらい体を動かしましょう。階段を降りて昇って帰ってくる、ストレッチをするなど軽い運動でいいですが、できれば外に出て歩くのがおすすめです。(161ページより)
人間の脳の働きは「動かずに頭がよくなる仕組み」にはなっていないのだそうです。人体は運動と皮膚感覚で脳とつながっており、体の動きと脳の動きは連動して発達するもの。逆にいえば、「動かないこと=頭が悪くなること」だというのです。(161ページより)
ゆっくり長く呼吸する
また呼吸するときにも、運動系脳番地がたくさん使われるようです。ヨガ、マインドフルネス、武道、禅などさまざまな分野において独自の呼吸法が存在しますが、脳の働きをよくするために効果的なのは「ゆっくりとした呼吸」なのだとか。
<頭を良くする呼吸法>
1 鼻から息を吸って、下腹を膨らませる(1〜2秒)
2 ゆっくり口から息を吐く(15〜20秒)
(162ページより)
このシンプルな呼吸法を用いると、脳内に新鮮な血液が流れ込み、神経細胞の活動に必要な酸素が充分に行き渡るのだそうです。そのため、脳の効率が上がるわけです。
脳の酸素が足りなくなると前頭葉の働きが弱り、思考や感情が乱れてイライラしたる不安になったりするもの。そんなときにも、この呼吸法が効果的であるようです。すぐにできることなので、試してみて、そして習慣化してみるべきかもしれません。
頭がよくなりたいという欲望は、脳が成長したがっている印なのだと著者は述べています。だからこそ、脳の操縦桿を握る必要があるわけです。誰にも真似できない自分自身の頭のよさを育てていくため、本書を参考にしてみるべきかもしれません。
Source: ぱる出版