『竹取工学物語』佐藤太裕著
[レビュアー] 産経新聞社
『竹取物語』が成立した平安時代前期には、すでに「よろづの事(いろいろな用途)」に使われていたとみられる竹。その不思議な形状を、構造力学・材料力学の研究者が工学の視点から解明する。
トンネルなどが持つ円筒構造の補剛(ほごう)・補強に関するヒントが竹の節の配置にあると考え、研究を始めた。節だけでなく、養分や水分を運ぶ管の集まりである維管束も力学的役割を担っているという。
竹ざお、竹ぼうき、竹とんぼ…。祖先は竹の構造・材料的性質を経験的に認識し、生活のさまざまな場面で利用してきたのではないかと著者。着眼点が面白い。(岩波科学ライブラリー・1540円)