【聞きたい。】月村了衛さん 『香港警察東京分室』

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香港警察東京分室 = Hong Kong Police Force Tokyo Branch

『香港警察東京分室 = Hong Kong Police Force Tokyo Branch』

著者
月村, 了衛
出版社
小学館
ISBN
9784093866828
価格
1,980円(税込)

書籍情報:openBD

【聞きたい。】月村了衛さん 『香港警察東京分室』

[文] 寺田理恵(産経新聞社)


月村了衛さん

■中国「闇警察」問題取り込む

テロや民族紛争が激化した近未来を背景とする小説「機龍警察」シリーズで知られる。国際情勢が絡む作品の数々は「どの作品も書いている最中とか本が出る直前になって、また歴史が動く」というほど時流を反映。本書も、中国の「海外闇警察」に関する報道が相次ぐ中でのタイムリーな発刊。改稿中に発覚し、完成した作品に取り込んだ。

「いろんな資料を読み込んで、こうなっていくだろうという推測を基に執筆を始めるけれど、さほど的外れではなかったのかな」

本書は、中国が海外でひそかに設けた警察拠点が日本にもあるとされる中、中国の非合法活動を野放しにするよりはまし、との思惑で警視庁に新設された組織が活躍する群像劇。

日中の警察官が協力して国際犯罪に対応するというのが新組織の建前で、メンバーは日本側5人と香港側5人の警察官。香港でデモを扇動し助手を殺害して日本に逃亡したとされる元大学教授を逮捕すべく、捜査するうちに謎が浮かぶ。武装集団同士の銃撃戦などアクションも読みどころだ。

キャリア官僚としては変人の水越真希枝管理官、紳士然としたグレアム・ウォン隊長ら10人ものメンバーを書き分けた。「キャラクターがおのずと動き出す。ストーリーは人物が作っていく。どれだけ作者が登場人物を生身の人間として把握できているかにかかっている」と人物を重視する。

とりわけ予想外の動き方をしたのは、香港側の無口で危険な感じがするシドニー・ゲン。終盤、心の奥底が明らかになる。「最初から考えていたように思えるじゃないですか。うまく決まっているので。ところがそんなことはなくて、そうだったのかという発見だったんです」。創作した人物に設定外の要素を見つける瞬間が、作者にとっての喜び。それを感じたいから、小説を書き続けるという。(小学館・1980円)

寺田理恵

   ◇

【プロフィル】月村了衛

つきむら・りょうえ 小説家。昭和38年、大阪市生まれ。早稲田大卒。平成22年、『機龍警察』でデビュー。これまでに日本SF大賞、吉川英治文学新人賞、山田風太郎賞などを受賞。本書で初の直木賞候補。

産経新聞
2023年7月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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