『花怪壇』
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誰も知らない怪談をあなたに
[レビュアー] 最東対地(作家)
『飛田新地(とびたしんち)』と聞いて、ピンとくるのは遊び好きな男。
ではピンとこないあなたのために説明しましょう。『飛田新地』とは、遊廓の面影をいまに残す、現代の歓楽街。ずらりと並ぶ店々には看板娘が愛嬌(あいきよう)を振りまき、遣(や)りて婆(ばば)がよってけよってけと客を引く。
四角い屋号の白看板と、夜空をにぎやかす提灯、どの子にしよかと鼻の下を伸ばす男客の群れ。訪れた人にしかわからない異界めいた光景は一度見たら忘れられないことでしょう。
ちょっと、だからといって写真はだめですよ。なんせここは撮影禁止。カメラを向けただけでおばちゃんのおっかない怒鳴り声が飛んできまっせ。ああ、だめだめ。営業時間に女の人が歩いてちゃ、ああ、ホステスさんですか。これはまた失礼。
……なんて、そんな現代の遊廓といっても過言ではない『飛田新地』ですが、実は他にもあることをご存じでしょうか。そこのあなた、よだれよだれ。
おっと残念。『新地』の話はここまで。え、もっと知りたいですか?
それじゃあ代わりといっちゃなんですが、あなたには『夜凪』をご紹介しましょう。
『夜凪』は、『飛田新地』のような歓楽街のことです。
本作、『花怪壇』ではこの『夜凪』を取り巻く、恐ろしくも悲しい怪談を私こと最東対地が追跡取材しています。ここでは書けないような不思議な体験や、今でもよくわからないことがたくさんありましたが、本作では余すことなくすべて書ききりました。
『花怪壇』は、ルポと実話怪談の側面が強めですが、とても面白く書けたと思います。歓楽街と怪談、という一見水と油のようにも思えるふたつの要素が、ぐにゃりとマーブル模様に混ざり合い、見たことのない色をお見せできるでしょう!
『花怪壇』、あなたにこそ是非、読んでいただきたいです。