『安西水丸が遺した最後の抒情漫画集 陽だまり』安西水丸著
[レビュアー] 産経新聞社
個性的な筆でイラストレーション界を(けんいん)し、平成26年に亡くなった安西水丸。晩年に小説誌に連載していた読み切り漫画4本のほか、親交のあった表現者6人の書き下ろしエッセーを収める。
ボクシングで挫折した男性と訳ありな女性との交流を追った「陽だまり」、雪深い北国のペンションを訪れた姉妹を描く「冬の客」…。シンプルな絵から立ち上がるのは、エロチックで情感豊かな世界。作家の村上春樹は収録されたエッセーの中で「どことなくすっとぼけた、しかし洒脱な味わい」にひかれたと回想している。異才の魅力を再発見できる。(講談社ビーシー・1980円)