<書評>『スーフィズムとは何か イスラーム神秘主義の修行道』山本直輝 著

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スーフィズムとは何か イスラーム神秘主義の修行道

『スーフィズムとは何か イスラーム神秘主義の修行道』

著者
山本 直輝 [著]
出版社
集英社
ジャンル
哲学・宗教・心理学/宗教
ISBN
9784087212778
発売日
2023/08/17
価格
1,144円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

<書評>『スーフィズムとは何か イスラーム神秘主義の修行道』山本直輝 著

[レビュアー] 瀬川千秋(翻訳家)

◆思索と修練の実践に親近感

 トルコの大学で教鞭(きょうべん)をとる著者によると、日本の少年マンガが学生に大人気だという。理由が意外だった。イスラム神秘主義とも訳されるスーフィズムは、弱く、間違いを犯す人間を救いへと導くアッラーの愛に気づくことを目指して己を磨き、哲学的思索や修行を行う。その道程に不可欠なのが導師であり、『NARUTO』や『ドラゴンボール』などに描かれる師弟関係がスーフィズムに重なるのだという。

 本書はスーフィズムの思想とともに、これまであまり取り上げられなかった実践面を、日本や中国文化の視点を交えて紹介している。例えば精神統一や祈禱(きとう)、瞑想(めいそう)、日常作法などの修練は型から心を学ぶ茶道や武道に近い「修行道(どう)」である、料理修行は仏教の典座(てんぞ)に似ているなど。禅宗や密教との類似点が随所に見つかるし、無心の行はブルース・リーの言葉「考えるな、感じろ」を想起させる。

 多くの日本人が異質と感じるイスラム精神世界だが、私たちには理解する素地があるかも、と気づかせてくれる一冊だ。

(集英社新書・1144円)

1989年生まれ。トルコ国立マルマラ大大学院助教。

◆もう1冊

『イスラームの論理』中田考著(筑摩選書)

中日新聞 東京新聞
2023年11月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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