『「シンプル」な選択が自律神経を整える理由』
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迷いが自律神経を乱すから…選択肢が多すぎる毎日を軽やかに生きるためのヒント
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
人間はさまざまな局面において、「こちらを選ぶべきか、それともあちらを選ぶべきか」というような岐路に立たされるもの。
しかも、ひとつを選択したとしても、その先にはまた別の帰路があり、枝分かれのように選択が続いていきます。つまり仕事においてもプライベートにおいても、人生は選択の連続であるわけです。
30年以上にわたり自律神経を研究してきた『「シンプル」な選択が自律神経を整える理由』(小林弘幸 著、青春新書プレイブックス)の著者によれば、問題は選択の際に生じる「迷い」。
情報やモノがあふれ、選択肢が増えている「選択肢過多」の現代では、「迷い」こそが自律神経を乱す大きな要因になっているというのです。
自律神経には、活動するときに働く交感神経と、休息するときに働く副交感神経があり、その2つがバランスを取りながら、心と体の安定を保っています。
ところが、迷うと「決めなければいけない」という行為がストレスになって、交感神経が優位になり、そのバランスが崩れてしまうのです。
決めたら決めたで、迷った末の選択なので、「本当にこれでよかったのだろうか」と不安になって、さらにストレスがかかり、自律神経を乱すという悪循環に陥ります。(「はじめに」より)
「魔が差す」ということばがありますが、それも自律神経の乱れによるものだそう。
迷うと自律神経が乱れるため、「負の選択」をしてしまうというのです。もちろん迷わなければ自律神経も乱れないわけですが、そうはいっても現代社会は毎日が選択のオンパレード。
そこで本書において著者は、「少しでも迷いを減らし、よりよい選択をするためにはどうしたらいいのか」ということに関するヒントを明らかにしているわけです。
きょうはそのなかから第2章「『選択肢』を減らすとラクになる 身のまわりのモノの『シンプル』な習慣」に焦点を当て、仕事にも応用できそうないくつかのトピックスをご紹介したいと思います。
「こうする」と決めておけば、迷わない
いうまでもなく、私たちが迷うのは「選択肢」があるから。
ですから、あらかじめひとつに決めておけば、迷う必要はなくなりストレスにもならないわけです。当然ながら、それは日常生活にもあてはまることであるはず。
「トイレに行こうか、どうしようか」ではなく、「少しでもトイレに行きたいと思ったら、どんな状況であれ、必ず行く」と決めておけば、迷うことはありません。
洋服だって、1着しかなければ迷いようがないですから、イライラすることもありません。
ところが5着あると、どれを着ていこうかとあれこれ迷ってしまい、ストレスがかかり自律神経が乱れます。(44ページより)
「洋服が1着だけ」というのは極端な表現かもしれませんが、とはいえ選択肢が増えるほど迷いやすくなるのは事実。そういう意味で、ぜひとも意識しておきたいところです。(42ページより)
選択肢は少なければ、少ないほどいい
選択肢が少なければ少ないほど適切な選択ができるということに関し、著者はコロンビア大学とスタンフォード大学の教授が行った興味深い実験を紹介しています。
とあるスーパーマーケットで、24種類のジャムを並べた場合と、6種類しか置かない場合とでは、どちらの売上が高いかを調べたというのです。
24種類のジャムを並べたほうは、来店した60%の客が試食をし、そのうち買ったのはわずか3%。一方、6種類のほうは、来店した40%の客が試食をし、そのうち30%の人が購入したのです。(45ページより)
たくさんのジャムが並んでいるほうが売れそうな気もしますが、結果は逆。むしろ、選択肢が少ないほうが購買率が高かったというわけです。
24種類のジャムのなかから選ぶとすれば、「まず半分の12種類に絞り、それを6種類に絞って、さらに3種類まで絞り、最終的に1種類に」というように何段階も踏むことになりそう。
しかし少ないなかから選ぶのなら、「感覚を頼りに3種類まで絞ってから、次に厳選する」というような選び方になる可能性が高まるわけです。
だとすれば、いっそ最初から選択肢を3種類にしておけば、迷いも少なくなり、選び方も明確になるはず。
考えてみてください。1000個の選択肢があったとして、そのなかから本当に自分がいいと思えるものを、たった1つ、選ぶことができますか?
いくら選択肢があっても、惑わされるだけなのです。むやみに時間とストレスがかかって、いい選択などできません。(47ページより)
そこで著者は、たくさんの選択肢のなかから選ぶより、最初から選択肢を2、3に絞っておき、そこから1つを選ぶほうがいいと断言するのです。そうすれば「迷い」を減らすことができ、自律神経が安定した状態で、より良い選択ができるからです。(45ページより)
仕事ができる人のデスクまわりは、なぜきれいなのか
著者は自身の経験をもとに、「仕事ができる人は、もれなくデスクまわりがきれい」だと指摘しています。
「片づけ」ができていて、机の上がスッキリしているということは、やるべきことと、やらなくてもいいことの整理が、頭のなかできちんとできているということ。
デスクまわりがきれいだと自律神経も整い、心も体も安定してきますから、仕事のパフォーマンスも上がります。(50ページより)
整理整頓ができている人は、重要な書類をどこに入れておくか、あらかじめ決めてありますから、迷わずそこにしまうことができます。
必要になったときも、入れてある場所がわかっているので、迷うことなくサッと取り出すことができます。(51ページより)
問題は、散らかっていると自律神経も乱れてしまうということ。
たとえば重要な書類を上司から手渡されたときには、「どこに置くか」という選択が生じることになります。
そんなとき整理整頓ができない人は、「あとでしまう場所を考えよう」と、何気なくポンと机の上に置いてしまう。そうこうするうちに、気づけば周囲は書類の山ということに。すると当然ながら、あちこちを探さなければならなくなり、ムダな時間を費やすことになってしまうのです。
しかも、単に探す時間がムダになるだけでは済まないようです。あたふたと書類を探すことで、交感神経が上がってしまうというのです。すると血流が悪くなり、集中力が低下し、その後の仕事にも悪影響が出てくるわけです。
つまり自律神経を乱さないためにも、断捨離をしてモノを減らしたり、整理整頓することはとても大切だということです。(50ページより)
モノや情報であふれかえった選択肢過多のストレス社会を生き抜いていくために大切なのは、少しでも迷いを減らし、よりよいと思える選択をし、安定した心と体の状態を保ちながら毎日を過ごすこと。そんな日常を実現するために、ぜひとも本書を参考にしたいところです。
Source: 青春新書プレイブックス