“ショートショート”を「5分後に意外な結末」に言い換えた児童書が500万部超ヒット! 現代の子供心をつかむ秘訣とは

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5分後に意外な結末 赤い悪夢[改訂版]

『5分後に意外な結末 赤い悪夢[改訂版]』

著者
桃戸ハル [編集]
出版社
学研プラス
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784052055867
発売日
2022/07/28
価格
1,210円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

動物最強王図鑑

『動物最強王図鑑』

著者
實吉達郎 [監修]
出版社
学研プラス
ジャンル
自然科学/生物学
ISBN
9784052042010
発売日
2015/05/26
価格
1,320円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

“ショートショート”を「5分後に意外な結末」に言い換えた児童書が500万部超ヒット! 現代の子供心をつかむ秘訣とは

[文] 新潮社


次々とヒット作を生み出す編集者・目黒哲也さん

 2013年の発売以来、凄まじい売り上げを記録している児童書がある。Gakken(学研)が刊行する「5分後に意外な結末」シリーズだ。刊行から10周年にあたる2023年の学校図書調査では中学生の男女ともに「読んだ本ランキング」の1位に輝き、シリーズ累計500万部を突破している。

 このシリーズを生み出したのが、同社の編集者・目黒哲也さんだ。目黒さんは、小学生を中心に大人気の「最強王図鑑」シリーズも手掛けており、こちらも累計400万部超の大ヒットとなっている。同社は「参考書や図鑑の、マジメな会社」というイメージが強いが、その枠にとらわれない人気作を多数生み出している目黒さんに、今どきの子供心をつかむ秘訣を聞いた。

 ***

■「ショートショート」をわかりやすく言うと?

――『5分後に意外な結末』という作品はどのようにして生まれたのでしょうか。

 僕が本好きになったきっかけは、小学生の頃に星新一さんの作品に出合い、それから筒井康隆さんに影響を受けたことでした。今の子供たちにもきっと「ショートショート」のような短編や「どんでん返し」のある作品の面白さは通じるだろうと思い、児童向けの短編集を出そうと考えました。

 ただ、「ショートショート」という言葉は昔に比べて今の子供たちには伝わりにくいかもしれないから、他のわかりやすい言葉に置き換えてあげようと思ったんです。もちろん、「ショートショート」の魅力は、「意外な結末」だけではないんですが、「5分くらいで読めて最後に意外な結末がある」ということをストレートに言っちゃった方がいいだろうということで、『5分後に意外な結末』という機能的なタイトルにしました。

 収録作品の中には1話読み終えるまでに5分以上かかるものもあれば、それ以下のものもあるでしょうが、あえて「5分」とタイトルに打ち出したのは、多くの小中学校で行われている「朝読書」の時間を意識したからです。

 朝読書はどの学校もたいてい10分間ほどですので、子供たちにとって長すぎることがなく、場合によっては2~3話ほど余裕をもって読めるのが5分だろうなと思ったんです。

――タイトルに込めた狙いがヒットにつながったのですね。

 ただ、他社にとってマネしやすかったようで、「5分」をタイトルに使った本がたくさん出てしまいました(笑)。ならばと、もっと短い時間で結末がわかる『5秒後に意外な結末』というシリーズの本を出して、ページの表裏で1話が完結するようにしてみました。この形式だと500字以下のストーリーで意外なオチをつけなければいけなかったので、編者とも苦労しながらつくりました。

「5秒」のシリーズは早く読めるという点に注目が集まりがちですが、「5分」と違って“結末の可能性を多く残したまま”楽しむことができるという面もあるんです。「5分」では、最初に謎があって、読者が読み進めるうちに想像していたオチの可能性が一つずつ消えていって、最後に意外なオチに辿り着くという読書体験です。でも、「5秒」は可能性を少しずつ消していくプロセスが省略されているので、「どんな結末になるんだろう」と色々な可能性をもったままオチを迎えるため、子供たちにとって別の面白さになっているんじゃないかなと思います。

 ですが、この「5秒」の表裏で完結するというコンセプトも、似たような本が出ました。じゃあ次は『5億年後に意外な結末』を出してみたりと、小さな改良と冒険を重ねながら新たなラインナップを増やしていって、今ではシリーズで計30冊以上のタイトルが出ています。

 シリーズの中には映像化を意識して企画した、共通の主人公や登場人物が出てくる「悩み部」というものもあります。これは架空の高校を舞台に「悩み部」のメンバーが活躍するストーリーです。特定の登場人物がいたほうが、映像化しやすいのかなと。ただ、2022年に読売テレビ・日本テレビ系「プラチナイト木曜ドラマ」でドラマ化されたのは、1話完結型のストーリーです。Gakkenでは映像化されるコンテンツがほとんどなかったので、すごく嬉しかったです。「悩み部」は、とても映像化に向いていますので、こちらの映像化もできたらいいなと思っています。

Book Bang編集部
2024年1月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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