「ウマ娘」でも活躍「メイショウドトウ」の現在は? 引退馬の牧場で猫とのんびり【写真あり】

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ボス猫メトと メイショウドトウ

『ボス猫メトと メイショウドトウ』

著者
佐々木 祥恵 [著]
出版社
辰巳出版
ジャンル
芸術・生活/写真・工芸
ISBN
9784777830749
発売日
2023/12/06
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

「ウマ娘」でも活躍「メイショウドトウ」の現在は?

[文] 辰巳出版

■人を信頼するよう育てられた競走馬だからこそ


(左から)キリシマノホシ、アシゲチャン、タッチノネガイ、タッチデュール

――佐々木さんはどのような想いからノーザンレイクを開場したのでしょうか。

 開場のきっかけはキリシマノホシでした。一緒に開場したパートナーで元JRA厩務員の川越靖幸が最後に勤めていた厩舎で担当していたのがキリシマノホシで、彼女は小柄でJRAでは勝つことが出来ず、園田競馬場で走っていました。引退後も余生を過ごせる馬は多くありません。川越と相談して引退後のキリシマを引き取ろうと決意しましたが、彼女はすでに家畜商の牧場に移動していました。家畜商の方が快く買い取りに応じてくれたため、彼女は今こうして私たちと暮らしていますが、あのままでは屠畜されていたでしょう。

 日本では年間8000頭近くのサラブレッドが生産されていますが、多くは天寿を全うすることがありません。なぜ馬だけ特別視するのか、牛や豚、鶏などの家畜も同じ命ではないかという意見もあります。たしかに同じ命ですし軽視するつもりは全くありませんが、競走馬になるべく生まれてきたサラブレッドは幼い頃から人とコミュニケーションをはかり、人を信頼するよう育てられます。そこが他の家畜と言われる動物たちと違うところだと思います。競走馬や繁殖、乗馬として人との信頼関係を構築してきた馬たちを、役割を終えたからと屠畜するのは馬に対する裏切りではないかと思うこともあります。

 ただ毎年の生産頭数やセカンドステージ、サードステージの受け皿を考えると、現状では全頭を生かすことは不可能です。現在の競馬を中心とした馬の一生のサイクルの中では、肥育や屠畜の業者がなくてはならない存在だと思っています。

 ノーザンレイクでは、せっかく命が繋がり縁あってやって来たのだから、少しでも馬たちが快適に過ごせるようにしたいと思っています。目の前にいる馬たちの後ろには、天寿を全うできなかったたくさんの馬たちがいるという思いで、お世話させてもらっています。

■馬×猫の最強タッグ


佐々木さんがメトを抱いて近づくとアシゲチャンが嬉しそうに「メト吸い」

――引退馬牧場なのに、猫のメトに注目が集まったのはなぜでしょうか。

 メトはもともと人懐っこく愛嬌のある猫でしたが、人気者のメイショウドトウの背中に乗った動画をTwitter(現X)に投稿したのがバズり、メディアへの露出も増えました。メイショウドトウに限らずメトと馬たちは仲良しで、その微笑ましい様子がSNSでは評判です。

 また、メトは牧場見学に来た人へのサービス精神が旺盛で、どこからともなく現れたかと思うと見学者の中心でゴロンと寝そべって撮影チャンスを自ら提供しています(笑)。そうしてメト撮影会になり、しゃがんで撮影する人がいようものなら、メトは「隙あり!」とばかりにその人の肩に乗っています。だから、メトに会った人はみんな虜になって帰っていきますね。

「ウマ娘」の公式絵でメイショウドトウのキャラの頭の上にメトと似た茶白の猫が乗っていたり、アニメでもメトのような猫が登場したりして、メトがTwitterのトレンドに入っていたのは驚きました。あらためて「メト×ドトウ」コンビの人気ぶりを感じましたね。

 他の馬たちもみんなメトのことが好きみたいで、厩舎内をうろつくメトを目で追っていたり、メトが近くにやってくると「猫吸い」をするんです。猫のふわふわの体に顔をうずめたいのは、人も馬も同じだったみたいです。馬×猫のタッグは最強ですね。

***

佐々木祥恵
北海道旭川市出身。競馬ライター。netkeiba.comで引退馬コラム「第二のストーリー~あの馬はいま~」を執筆。2020年7月から元JRA厩務員の川越靖幸とともに新冠に移り住みノーザンレイクを開場、雑用係として働く。人と馬をより身近にするサイト「Loveuma.」にて「ノーザンレイクダイアリー」を週1連載中。

辰巳出版
2024年2月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

辰巳出版

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