『ぼくらは回収しない』
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『ぼくらは回収しない』真門浩平著
[レビュアー] 宮内悠介(作家)
第十九回の「ミステリーズ!新人賞」を受賞した短編、「ルナティック・レトリーバー」をトリに収録した作品集。「独立作品集」と銘打たれているだけあって、高密度の謎解きや多重解決など、多種多彩な五編が用意されている。
たとえば冒頭の短編では、テレビの街頭インタビューがウェブで炎上してしまった姉を助けてほしいと依頼を受け、短いインタビュー映像から謎を解く「日常の謎」ものが展開される。ほかには、お笑い芸人の殺人事件や、探偵を理解しようとして追いかける同級生の話など。
どの話もひねりが効いていて、ただでは終わらない。そしてときにミステリという表現形態そのものへの批評性が含まれていたり、ときにそれと響きあうような形で、青春の苦さや挫折感のようなものが描かれたりするのが印象深い。
ミステリファンにとっては気になるだろう題名、『ぼくらは回収しない』の意味は何か。もしかして、伏線が回収されないのか。そしてこれはタイトル回収されるのか。それについては、お楽しみということで。(東京創元社、1870円)