かつて東京中にあふれていた名画座について、著者の記憶を中心に上映作品や周辺の雰囲気にまで思いをめぐらせてたどった一冊。池袋や新宿、銀座など、主な繁華街の昭和49年と64年を比較した地図や、映画看板が立ち並ぶ劇場前の写真も掲載されていて、昭和の東京をかろうじて知る身として懐かしい気分になる。
改めて感じるのは、どの街も映画館は地域の顔で、さまざまな人が映画の灯を目指して集まってきていたということだ。著者はCMなど映像編集の仕事を手がけてきた人物だが、映画体験を記録することの大切さを再確認した。(ワイズ出版・2200円+税)
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2016年4月10日 掲載
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