「ビットコインはへんなものではない」日銀出身の経済学者がビットコインの信頼性について解説

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 日銀出身の経済学者・岩村充さんが3月27日NHKラジオ第1「マイあさラジオ」のコーナー「著者に聞きたい本のツボ」に出演し、ビットコインの信頼性について語った。

■中央銀行の役割とは

 岩村さんは日本銀行出身で、現在は早稲田大学大学院の教授を務める。岩村さんの新著『中央銀行が終わる日 ビットコインと通貨の未来』(新潮社)は、金融緩和の状況や通貨の問題を検証しながらビットコインがもたらす可能性について記した貨幣論だ。同書で岩村さんは、現在日銀が行っている景気刺激は中央銀行の果たすべき役割とずれている、と述べる。中央銀行の本来の役割は、貨幣価値の安定とよい決済手段の提供が基本だという。「そこをおろそかにしている世界の中で、ビットコインのような新しい挑戦者があらわれた。そういう文脈の中で貨幣の歴史を捉えなおしてみようと思って書いた」と同書執筆の経緯を語った。

■ビットコインの信頼性は?

 岩村さんは「ビットコインはへんなものではない、おかしなものではない、ひとをだまくらかしているものではない」と世間に広まる懐疑論に意見を述べた。そしてその仕組みを、先進的なものではなく、枯れた技術の組み合わせ、だと語る。デジタル署名やハッシュ関数などアメリカの工業標準にずっと昔になっている技術をうまく組み合わせてつくられたと話し、「コロンブスの卵」のように歴史に影響を与えるものだと評価した。

■「マイナー」の苦労が価値を決める

 岩村さんはビットコインの取引の正当性を保証するものとして「マイナー」と呼ばれる人々の存在をあげる。マイナーはビットコインの条件をみたすデータを完成させるとコインが手に入る。それが報酬になってマイナーが集まる。そのように競争のメカニズムでデータの正当性を確保している。結果的に誰が(国や銀行が)やるよりも公平公正なものを作り出してしまった、とビットコインの仕組みの革新性を解説した。そして、ビットコインと古代の巨石貨幣の共通点をあげた。巨石貨幣とは、遠くの島から運んできた石を丸く磨いて貨幣として使う仕組み。「これは貨幣というものの本質をよく示している。貨幣は絶対的な価値があるから重要なのではなく、作り出すことに費用がかかるから価値がある」と共通点を指摘した。番組聞き手の野口博康さんは「ビットコインは巨石貨幣と同じようにマイナーたちの苦労が価値を決めているんですね」と納得していた。

 また岩村さんは、中央銀行が市中からの預かり金にマイナス金利を付すのではなく、銀行券そのものにマイナス金利を課すというアイデアについても解説した。そして、ビットコインと現在の通貨を比較しながら、通貨の選択は起こるのかについても論じた。

 NHKラジオ第1「マイあさラジオ」のコーナー「著者に聞きたい本のツボ」は毎週日曜6時40分ごろに放送。
(*「著者に聞きたい本のツボ」インタビューの全文は[→]こちらでお聞きいただけます。)

Book Bang編集部
2016年3月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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