日本、中国、朝鮮、モンゴル、ロシア「五族協和」を目指した「満州建国大学」元学生たちの友情と理想に胸が熱くなる

テレビ・ラジオで取り上げられた本

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 朝日新聞記者の三浦英之さんが書いた『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』(集英社)が、4月3日NHKラジオ第1「マイあさラジオ」のコーナー「著者に聞きたい本のツボ」で取り上げられた。同書は日中戦争のさなか旧満州にあった幻の最高学府「満州建国大学」の学生たちの証言をまとめたルポルタージュだ。

■言論の自由をどこまでも認める大学

 著者の三浦さんは、1937年から1945年まで日本の国策のもと存在した「満州建国大学」では、日本国内で禁止されていた「言論の自由」が保証されていたと語る。日本、中国、朝鮮、モンゴル、ロシアの「五族協和」の実現を目指すため、日本人の生徒は50%以下に抑えられ、20人ほどの五族の学生がひとつの寮で衣食住をともにしていた。そこでは夜になると座談会が行われ、五族が議論をぶつけ続けていたと三浦さんは語った。そして当時の資料にあった「国際教育という点からみればかなり成功していた」という言葉を紹介し、建国大学は日本で初めて作られた国際大学だったと論を展開した。元学生のなかにはいまでも「言論の自由はなんとしてでも守る」という文化が残っており、意見の違いを受け入れてつきあってゆこうという意識がある。その例として、戦後、中国人の元学生が建国大学を批判する本を出したいと声をあげたときの事例を紹介した。その声に日本人の元学生たちが応え、お金を出し合い本を出版をしたのだ。言論の自由をどこまでも認めるという建国大学の精神がよくあらわれた事例だ。

■議論を続ければ五族は対等になれる

 また当時の学生の日記を読んだところ「日本の朝鮮に対する政策は間違っていた」と書かれており驚いたとも語った。三浦さんは日本の戦中・戦前は思想統制されており、洗脳されていたというイメージがあったが、当時の学生は議論の末、日本の矛盾に目をむけることもあったというのだ。そして議論を続ければいつか五族が対等になれると信じており、今もまだそう考えているという。

■「ガンバレ、ガンバレ」

 中国、韓国、ロシアと当時の学生を取材してまわった三浦さん。しかし元学生のなかには日本の帝国主義に加担したと責められ、それぞれの国で不遇な人生を送っている人もいたという。そのなかからロシアで強制収容所に入れられていた元学生の言葉を紹介した。「(復興を遂げる日本を眺めながら)日本への憧れでいっぱいだった。俺は皆に吹いてまわりたかった。建国大学という最高の大学で勉強したんだ。今同窓生が日本で大活躍しているんだぞ」そして「ガンバレ、ガンバレ」と日本語で言いながら強制労働を乗り越え、戦後70年をカザフスタンで過ごしてきたというのだ。

■彼らに発言の機会を与えていれば……

 戦後、侵略者・傀儡国家のエリートとのレッテルを貼られた学生たちには発言の機会が与えられなかった。彼らが公の場で発言できていたら、戦後日本の歴史認識はバランスのとれたものになったのではないか、と三浦さんは考えを述べた。そして五族協和という理想を追い求めた建国大学の理念は、世界中の国が憎しみ合っている今だからこそ、進むべき道を照らし出しているのではないか、と論を締めた。

 NHKラジオ第1「マイあさラジオ」のコーナー「著者に聞きたい本のツボ」は毎週日曜6時40分ごろに放送。聞き手は野口博康さん。

Book Bang編集部
2016年4月8日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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