『食堂かたつむり』『つるかめ助産院』の小説家・小川糸 携帯電話を持たないワケ

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 小説家の小川糸さんが4月20日NHKラジオ第1の「すっぴん!」に出演した。小川さんの最新刊『ツバキ文具店』(幻冬舎)の紹介や、ライフスタイルブック『これだけで、幸せ 小川糸の少なく暮らす29ヵ条』(講談社)で語られた小川さんの「少なく贅沢な暮らし」の魅力がたっぷりと語られた放送となった。

■手紙を書くのが好き

 小川さんの無駄なモノを持たない、最小限のモノを持って生きるライフスタイルは女性を中心に人気を呼んでいる。上質なもてなしを描いた『食堂かたつむり』(ポプラ社)は柴咲コウさん(34)主演で映画化もされた。また『つるかめ助産院』(集英社)もNHKでドラマ化されている。新作『ツバキ文具店』は鎌倉にある文具店が舞台。店主である主人公は代書屋さんも営んでおり、色々な人から頼まれて手紙を書いている。小川さんは「私自身お手紙を頂くのも好きだし、書くのも好き」と語る。番組パーソナリティーのダイアモンド☆ユカイさん(54)は手紙を書くのが好きだが、「上手く書けないんですよね。どんどん書けなくなっていてもどかしい。書かなくなって自分が退化している気がする」と同書で題材となっている手紙の魅力について語った。

■素敵な鎌倉の風景も

 同作ではお客さんごとにストーリーが生まれてくる。「それぞれの人物がとても魅力的。そういう登場人物はどうやって誕生させるんですか?」と藤井彩子アナウンサー(46)が尋ねると、小川さんは「実際に会ったことのある人や友達、この人だったらどんなストーリーになるだろう、と想像を広げる」と答えた。また舞台となる鎌倉に小川さんも実際住んでいたことがあるという。物語には実際にあるお店や食べ物も登場する。ダイアモンド☆ユカイさんは「素敵な店がいっぱいある。読んだうえで鎌倉を訪れると面白いだろうな」と鎌倉の上品な魅力も描かれていると語った。

■携帯電話は持たない

 また話は小川さんが昨年上梓した『これだけで、幸せ 小川糸の少なく暮らす29ヵ条』にも及んだ。こちらは心地よい暮らしのために一生添い遂げられるモノを、時間をかけて探し、「少なく贅沢に」暮らすという小川さんのライフスタイルを紹介した一冊。藤井アナに「愛着を持つモノと潔くさよならする(モノ)という両立が難しい。選択の基準は?」と尋ねられると小川さんは「『実用』を大事にしている。自分が使いこなせないと思うモノは、より良く使える人のところへお嫁に出したりします」と話す。そして同書に登場する“ものづきあい”という概念も「私は人生の折り返し地点を過ぎているので、これから一生そのモノと添い遂げられるか、長く丈夫に使えるかを考えます」と解説した。そして持っていないモノとして携帯電話をあげた。「外で人前で電話をしているのが恥ずかしいし、外出の時の持ち物を軽く減らしたい」とその理由を語った。

■考え方が変わるきっかけは?

 小川さんは昔からそうだったのかと問われ、「40歳になったのが大きかった。半分はすぎたなと思う。それまではプラスプラスで足し算が幸せだと思ってきた。40歳を境に引き算で身軽になって自由になる方が幸せだなと思った」と。そのきっかけはモンゴルで遊牧民と一緒に生活したことだったと語る。彼らは移動しながら生きてゆくので必要最小限のモノしか持っていない。「モノがいっぱいあるほうが豊かで幸せだと思っていたが、フライパンひとつで、ご飯も炊く、焼く、お湯を沸かす、などを済ます遊牧民のお母さんを見て、知恵を使ってひとつでなんでもできる“かしこさ”の方が素敵だなと思った」と心境が変化したきっかけを語った。

「すっぴん!」はNHKラジオ第1放送にて月曜から金曜8:05から日替わりのパーソナリティーで放送中。ダイアモンド☆ユカイさんは水曜日を担当している。

Book Bang編集部
2016年4月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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