元財務官僚・高橋洋一氏は「森友学園問題」「加計学園問題」をどう分析するのか

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連日のように報道されている「森友学園問題」「加計学園問題」。一向に真相が明らかにされず、泥沼化の様相を呈しています。元財務官僚の高橋洋一さんは、その理由として日本の官僚とマスコミの問題が大きいといいます。高橋さんの最新著書『大手新聞・テレビが報道できない「官僚」の真実』から、その理由を見ていきましょう。

文科省の内部文書の実在が確認されたが──

 加計学園問題がなかなか収束しない。その理由は明確だ。追求する野党および報道するマスコミが、この問題を延々とミスリードし続けているからだ。

 巷で言われている加計学園問題をごくシンプルにまとめると、国家戦略特区に認定されている愛媛県今治市で、「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設計画が認可されたのは、同学園の理事長が安倍首相の友人であるからだ、という疑惑である。

 野党やマスコミは、認可にあたって安倍首相の意向が働いた、あるいは、官僚が首相の意向を忖度したのではないかという、森友学園問題とまったく同じ切り口の追求をしているのだが、加計学園問題ではその有力な証拠として、文部科学省から流出したとされる文書を挙げている。

 この文書は、会議を記録したとおぼしき議事録風のメモの体裁となっている。加計学園の獣医学部新設について、内閣府の官僚が文部科学省の担当者に、「平成30年4月の開学を大前提にして欲しい」、「(これは)官邸の最高レベルが言っていること」、「総理のご意向だと聞いている」などと、伝えている様子が記録されているのだ。

 そして、文科省の内部調査により、この文書が複数の文科省の官僚に共有されていることが判明し、ますますその内容の信憑性が高まった(=首相が関与している可能性が高まった)として、野党やマスコミの追求がヒートアップしたわけである。

総理が意向を働かせる余地は皆無

 しかし、文書の実在が確認されたとしても、加計学園の獣医学部新設が認可されるまでの経緯を見れば、認可に「総理の意向」が働く余地は皆無であることが簡単にわかる。

 新設について議論が交わされたのは、国家戦略特区ワーキンググループや内閣の閣議の場である。新設を推進するのは内閣府および特区有識者委員の規制緩和推進派で、阻止をしたいのは文科省と農水省の既得権維持派だ。

 この議論の経緯は、議事録としてネット上で公開されており、ポイントとなるのは、以下の3つである。

1)2015年6月8日国家戦略特区ワーキンググループ議事録
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/hearing_s/150608_gijiyoushi_02.pdf

2)2015年6月29日閣議決定(文科省部分
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu22/siryo/__icsFiles/afieldfile/2015/09/02/1361479_14.pdf

3)2016年9月16日国家戦略特区ワーキンググループ議事録
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/h28/shouchou/160916_gijiyoushi_2.pdf

 各議事録を読むと、議論は規制緩和推進派の”完勝”となっている。しかも、この議事録は内閣府と文科省の双方が合意済みである。この点、内閣府がチェックしていない文科省文書とは証拠能力がまったく異なる。2015年6月に閣議決定では、獣医師の需要見通しを文科省の責任で2016年3月までに作ることが決まった。これは当然で、獣医師が足りていて獣医学部の新設が不要というなら、それを裏づける獣医師の需要見通しを示す”挙証責任”は許認可権のある文科省にあるからだ。挙証責任が文科省にあるのは、特区基本方針(2014年2月閣議決定)にも書かれている。しかし、期限の2016年3月になってもできず、半年後の9月になっても、文科省は需要見通しを出すことができず、事実上、議論が決着している。

 新設認可に至るまでの具体的な議論は、省庁の課長レベルと特区有識者委員で交わされている。問題の文科省の内部文書は、議論にほぼ決着が着いた2016年9月後半以降に作成されたとみられている。こうした経緯を踏まえれば、新設に関して総理の意向が働く余地はまったくないことがわかるだろう。

「総理の意向」はでっち上げ!?

 では、なぜ文科省の複数の官僚に内部文書が共有されていたのだろうか? 筆者が財務省の官僚だったときの経験からも、官僚が交渉相手となる他省庁の官僚の要求について文書で大げさに強調することは、かなり一般的なケースといえる。これは民間でもよく見られる話だ。

 議論で負けた官僚が、負けたことを正当化するために、文科省内に向けて書いたのではないだろうか。「総理の意向なんだから、成す術がなかった」ということを強調したいがために、半ばデッチ上げた文言だろう。情報の価値としては、怪文書と大した違いはない代物である。そんな程度のものにもかかわらず、マスコミは鬼の首でも取ったかのように、文書を決定的な証拠と決めつけている。

 加えて、新設認可が加計学園1校のみにとどまったことについても触れておこう。

 規制緩和推進派と既得権維持派の議論の過程で、既得権維持派のバックにいる獣医師会も、新設反対だけではもたないと考えたようだ。途中から、1校であれば容認というスタンスに変わったことが公表資料から明らかになっている。1校容認ということであれば、ウェイティングリストに載っている最初のところが優先的になる。加計学園が新設を申請したのは2007年である。もう1つ申請していた京都産業大学は2016年だ。この順番をひっくり返したのであれば問題だが、申請が古いほうを優先しているのだから問題にはならないだろう。マスコミには、こうした視点も欠けている。

 そもそも、規制緩和を推進する側は新規参入を排除する理由はない。「1校のみ容認」というのは、獣医師会の1校という養成を受けて、規制緩和推進派と既得権維持派が折衝の過程で作った落し所だと考えられる。

森友学園問題の二の舞に

 筆者が加計学園問題で述べてきた解説は、公表されている事実に基づいた単純なものだ。しかし、野党やマスコミはこの真相にまったくたどり着けていない。その理由は、目の前の現象だけしか見ていないからだ。

 一方の当事者だけから示された「文書」や「会見発言」を、金科玉条のように受け取ってしまっているから、加計学園問題には「総理の意向」が働いていると思い込んでしまっている。

 この構図は、例の森友学園問題とまったく同じである。地中ゴミの存在を伝えずに売却をしようとした近畿財務局の担当者のミスで、国有地が安く買えただけなのに、そこに政治家の関与を匂わせている森友学園の籠池泰典理事長の発言だけを頼りに、安倍政権を追求する野党とマスコミ――。

 筆者には、この籠池氏と、規制緩和派との戦いに負けただけにも関わらず、安倍政権の関与に言及する文科省前事務次官・前川喜平氏が完全にダブって見える。そして、森友学園問題が空振りに終わった教訓をマスコミはまったく学んでいない。

 加計学園問題が発覚した当初、マスコミは「総理の意向」の存在と、前川前文科次官の記者会見の内容が正しいという前提で報道していた。そんな中、本書で筆者はマスコミに先駆けて「前川証言は間違っている」と指摘している。

 本書の発刊後、加戸・前愛媛県知事、京都産業大学の記者会見が行われたことにより、筆者の主張の正しさが証明され、筆者の先見性は明らかになっている。

マスコミがニュースの真相を掴めない理由

 思い起こしてみれば、マスコミが情報を分析し、取捨選択をする能力は、以前から無かったといえる。

 筆者は、財務省にいたときにマスコミ対策を担当したことがある。ニュースがあるときは、マスコミ用にまとめた資料のコピーを持って行き、記者たちに「レク」をしていた。レクというのはレクチャーのことで、たんに資料の解説をするだけである。すると、その日のニュース番組や翌日の新聞は、資料の内容をそのまま鵜呑みにした報道をしてくれるのだ。財務省に都合の良い政策のキャンペーンをすることも簡単だった。

 日本のマスコミの最大の問題点は、自分たちで一次情報やデータにあたって調べる、ということができないところである。その結果、官僚が出したというだけで内容のないメモを信用し、裏付けをとることもせず、垂れ流しているのである。

 実は、加計学園問題にしろ、森友学園問題にしろ、より重要な問題が露呈していることを見過ごしている。それは、単なる公務員にすぎない官僚が、あたかも政治家のように、裁量権を振りかざしている事実だ。官僚が自分たちの都合のいいように行政を歪めている実態が透けて見えているのである。そういえば、各省庁の許認可・予算配分は天下りと密接な関係がある。今回話題の前川氏は、他方で天下りに精を出し国家公務員法違反をしている。これは、前川氏のいう行政がゆがめられたというのは、天下りをするための許認可に多少は関与するなという意味だろう。

 本来、マスコミや野党は、この2つの問題をとおして、官僚が行政を歪めている実態を追求しなければいけない。しかし、それを追求しているマスコミは皆無である。

 既得権を維持することに邁進し、官僚の天下りを墨守し続けてきた前川氏が、こともあろうに”反権力のヒーロー”のように扱われている現状では、それは望むべくもないことかもしれない。

──SB新書『大手新聞・テレビが報道できない「官僚」の真実』では、ここで掲載した「加計学園問題」「森友学園問題」を皮切りに、「年金問題」「消費税増税問題」などのウラに隠された真の狙いを高橋洋一さんが鋭く分析し、日本の官僚と官僚機構の弊害、および、その解決策を提示している。

SBCrOnline
2017年7月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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