「東大に入る子」は、小学校入学前のお母さん次第で決まっている 東大生に早生まれが少ない理由は、ここにあった!

こんな本を読んできた

3
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 30年以上受験勉強法の本を書き、それに基づいた通信教育や、東京大学、医学部合格のための専門塾などを経営してきて、最近気づいたことがある。確かな実績に基づく受験テクニックやデータからまとめた勉強法の話をしても、学生たちに響いていない気がするのだ。
 むしろ、「東大出て医者になったような頭のいい人の言うことを、僕たちが実践したって、どうせうまく行くはずがない」「もともと頭が悪い私なんかが成功するわけがない」という、ハナから諦めている空気を感じることのほうが多い。
 それが大きなまちがいであることを伝えなければならないという、使命感のようなものが強くなってきた。というのも、少しだけ「自己評価」や勉強法を変えただけで、短期間に成績を伸ばして東大に合格し、その後、社会に出て素晴らしい活躍をしている若者を何人も見ているからだ。そして、これは、私が精神科医として行ってきた活動とも大きく関わっている。

 精神科医としての私の思考のベースになった、オーストリア出身のふたりの偉大な心理学者がいる。アメリカに渡って精神分析の世界に大きな影響を与えたハインツ・コフートと、心理療法を確立した学者のひとりで、最近書籍でも話題になったアルフレッド・アドラーだ。
 ふたりは、人の精神が成長する過程に関して相反する主張をしているが、いずれも子育てをする上で参考になると考えている。
 最近でもふたりの書籍を読み返すことが多いが、特にコフートの『自己の修復』は、自己という主観的な世界に関する彼の生涯の研究の集大成であり、精神分析の意味を様々な面で大きく変えた、医師としての私を今も助けてくれている名著だ。

 簡単にふたりの考えの違いを説明すると、コフートは「人間は生まれつきの野心は持っておらず、幼児期に親に褒められることによって、”もっと褒められたい”という野心を持つところから成長が始まる」と説明し、アドラーは「人はそもそも競争に勝ちたいという本能的な欲求を持っていて、子どもは競争の中にさらすことで成長する」と主張した点だ。
 どちらが正しいということではなく、ある意味どちらも正しいのだと思うが、子育てに関して言えば、私は少しコフートに近い考えを持っている。子どもを競争にさらせば、当然負けることもある。その体験をうまく消化できなければ「劣等コンプレックス」として子どもの心に深く刻まれてしまう。これがその子の人生に後々大きな影を落とすことさえある。だから、そうしたときに、親がいかに子どもを支え、自信を失わせないようにすること、また「できること」を褒めて自信を持たせることが、とても重要なのだ。そのために、まず人生初の大きな競争の山がやってくる小学校入学までに、いかにしてその子に自信を持たせてやれるかが、親ができる子どもへの最大のサポートと言ってもいい。
 小学校入学時は、4月生まれの子と、その翌年3月生まれの子が同じクラスで同じ勉強をする。言ってみれば、一歳年が違う子を無理矢理一緒に勉強させているわけだ。このころの子どもは、1年で心身ともに大きく成長するため、ほぼ1年遅く生まれている早生まれの子は体も小さく、できることも少ない。この子たちを同じスタート地点に立たせてしまうと、ちょっとした「できない」感覚が、その子の生涯に影響を及ぼす「劣等コンプレックス」になってしまう可能性も高い。逆に言えば、入学時に「何でもできる」感覚を持つと、生涯に渡ってそれが大きな自信につながる。東大生に早生まれが少ないというのは、よく言われていることだが、それは、ここに理由があると考えている。

 私の新刊『「東大に入る子」は5歳で決まる』は、そのあたりのことをきっかけに、入学前にいかに子どもに「できる」感覚をつけさせることが重要かを、親御さんたちに意識改革をしていただくつもりで書いた。「先取り学習」「詰め込み教育」は諸悪の根源のように言われてきたが、幼児期の子どもにとって、「できなかったことができるようになる」「知らなかったことが理解できる」のはつらいことではなく、吸収力が高い子どもの脳には、むしろ「快体験」である。子どもが楽しんで学べるのであれば、5歳で小学2年生用のドリルをさせてもまったく問題ない。
 そうなれば、早生まれであっても、入学時にはすべて「できる」状態であり、「根拠のある自信」となって、その子を生涯支える力になる。
今回の本では、入学前に親ができることを、具体的に書いた。国語・算数・英語の幼児教育に関しても、できる限りわかりやすくまとめた。

 東大に入れることが目的ではない。それは選択肢のひとつにすぎない。子育てのただひとつの目的は、その子が将来、社会で幸せに生きていく力をつけてやること。そのためにとても重要な幼児期~小学校時代、子どもの「できること」を増やし、笑顔を増やすことこそが、親にとっての幸せにもつながると信じている。

和田秀樹 わだ・ひでき 1960年大阪出身。85年東京大学医学部卒業。現在、国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学専攻)、川崎幸病院精神科顧問、一橋大学経済学部非常勤講師、和田秀樹こころと体のクリニック院長。映画監督として受賞歴もあり、著書も多数、マルチな活動を続けている。

Book Bang編集部
2017年11月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

  • このエントリーをはてなブックマークに追加