第5回渡辺淳一文学賞が発表 金原ひとみ『アタラクシア』に決定

文学賞・賞

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 第5回渡辺淳一文学賞が1日に発表され、金原ひとみさんの『アタラクシア』(集英社)に決まった。

 受賞作『アタラクシア』は、結婚生活に平穏を求めながらも、欲望に振り回される男女を描いた長編小説。不倫やパパ活、DVなど矛盾を抱えた人々の姿を描きながら、家族観やモラルなどの問題を浮かび上がらせた作品だ。

 女優の中江有里さんは、本作について「内臓を鷲掴みにして引き出され見せつけられるような感を覚えた。普段は皮膚の下にあるグロテスクな自分の中身に目をそむけたくとも、なぜか見ずにはいられない」(週刊新潮・書評)と評している。
https://www.bookbang.jp/review/article/571537

 著者の金原ひとみさんは、1983年東京生まれ。2003年に『蛇にピアス』ですばる文学賞しデビュー。翌年、同作で芥川賞を受賞する。2010年には『TRIP TRAP』で織田作之助賞、2012年に『マザーズ』でドゥマゴ文学賞を受賞。著書に『アッシュベイビー』『AMEBIC』『オートフィクション』『ハイドラ』『星へ落ちる』『憂鬱たち』『持たざる者』『マリアージュ・マリアージュ』『クラウドガール』『パリの砂漠、東京の蜃気楼』などがある。

 渡辺淳一文学賞は、昭和・平成を代表する作家・渡辺淳一の功績を讃え、2016年に集英社により創設された文学賞。前年1月から12月に刊行された小説を対象に純文学・大衆文学の枠を超えた、人間心理に深く迫る豊潤な物語性を持った作品に与えられる。第5回の選考委員は、浅田次郎さん、小池真理子さん、高樹のぶ子さん、宮本輝さん4氏が務めた。

 昨年は、松井今朝子さんの『芙蓉の干城』(集英社)が受賞。第3回は東山彰良さんの『僕が殺した人と僕を殺した人』(文藝春秋)、第2回は平野啓一郎さんの『マチネの終わりに』(毎日新聞出版)、第1回は川上未映子さんの『あこがれ』(新潮社)が受賞している。

Book Bang編集部
2020年4月2日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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