【産経の本】『毛沢東秘録 上・下』産経新聞「毛沢東秘録」取材班著

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 ■なお続く毛沢東と習近平の革命

 20年ぶりの文庫化となった本書は、中国共産党主席の毛沢東と文化大革命の全体像を立体的に浮かび上がらせた菊池寛賞受賞作だ。約250冊の文献から「何があったのか」を拾い出し、再構成している。

 1976年10月、毛沢東未亡人の江青(こう・せい)ら「四人組」が権力闘争に敗れ、逮捕された内幕を解き明かすところから始まる。その後、時代をさかのぼり、文革の熱狂的な高揚、国家主席・劉少奇(りゅう・しょうき)の粛清、毛沢東後継の地位にあった林彪(りん・ぴょう)の国外逃亡途中の墜死など、一気に読ませる。

 76年9月に死去した毛沢東を、いまなぜ世に問うのか。

 現在の指導者、習近平の目指す男が毛沢東その人だからだ、と新たに解説を書いた河崎真澄・本紙論説委員は指摘する。習は憲法改定で2期10年という規定を取り払い、国家主席の座にとどまり続けることを可能にした。軍事力を増強し、周辺の国や海域にまで勢力を広げ覇権を追い求めている。その姿はまさに血なまぐさい歴史をたどった毛時代への回帰といえる。

 取材班が集めた文献は中国人の編著者によって中国で出されたものであり、読者には新鮮な毛沢東像が感じられるはずである。(産経NF文庫・上880円+税、下900円+税)

産経新聞
2021年1月30日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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