【産経の本】『ゲッベルスとナチ宣伝戦 一般市民を扇動する恐るべき野望』広田厚司著

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■プロパガンダの怪物の正体

ロシアのウクライナ侵攻が長期化している。両国の宣伝戦は、開戦から5カ月たった現在、ゼレンスキー大統領自らの情報発信が功を奏しているウクライナに、いささか分があるようには見える。

そんな国家の命運を左右する宣伝戦とは、いかなるものなのか。本書は第二次世界大戦時、ドイツで宣伝大臣として権勢を振るったヨゼフ・ゲッベルスの宣伝手法にスポットを当てている。

最盛期には1万5000人の職員を擁した世界最初にして最大の「国民啓蒙(けいもう)宣伝省」。ヒトラーの下で同省を率いるゲッベルスは、例えば国民感情を操るために「巨大な集会」がより効果的だと考えた。集会の多くは人々の抵抗心が薄れ、説得を受け入れやすいとされる「午後8時以降」に行われたという。本書はこうした一般市民を扇動する具体的な方法に踏み込んでいる。

従来の歴史書ではあまり触れられていなかった新聞・雑誌、映画、切手、芸術などの宣伝ツールについて取り上げ、200枚以上の写真と当時のポスターを収録。すべてのメディアを掌握し、市民を従属させた「プロパガンダの怪物」の正体に肉薄している。(光人社NF文庫・1012円)

産経新聞
2022年7月30日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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