拭く回数は3回まで、温水洗浄便座の水圧「強」はNG お尻トラブルの原因を専門家が解説<世界一受けたい授業>

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 外出自粛や在宅ワークなどが増え、お尻を取り巻く環境が変わっており、いま便秘やお尻の痛みを訴える人が増えています。

 教育バラエティー番組「世界一受けたい授業」(日本テレビ系、土曜午後7時56分)では、5月22日放送回にて「ベストセラーから学ぶ!いま気を付けたいカラダ」と題した授業が放送予定です。

 その中で、体の不調として『オシリ』をテーマに授業をするのが『痛み・かゆみ・便秘に悩んだらオシリを洗うのはやめなさい』著者で10万人のオシリを見てきた肛門科医の佐々木みのり氏。

 放送を前に、そこで、お尻トラブルの専門家に話を聞いてみました。


間違ったトイレの入り方とは

――なぜ、オシリのトラブルはここ数年増えているのですか?

 新型コロナの感染拡大により、座りっぱなしの人や、長時間トイレに入っている人などが増えています。

 その結果、オシリがうっ血してしまい、オシリのトラブルを引き起こしているのです。

――温水便座は便利ですが使用してはいけないのですか?

 オシリのトラブルがある人が、使用する場合は気をつける必要があります。温水洗浄便座に限らず、オシリを洗いすぎることがいちばんよくありません。

 オシリの皮膚は薄くてデリケートなため、洗いすぎることで「皮脂膜」が剥がれ落ちてしまいます。皮脂膜は、とても重要な皮膚のバリア機能。皮脂膜があるので、私たちの皮膚は潤いを保ったり、バイ菌やウイルスの増殖を防いだり、ダニやホコリ、ハウスダストなどの異物が侵入しないようになっているのです。

 温水洗浄便座で洗う場合は、次のことを意識してください。

「水圧はいちばん弱く、水温はいちばん低く、洗浄時間は3秒以内」

――では、オシリの洗い方として正しい洗い方とはどのようなものなのでしょうか

 オシリを洗うこと自体、本当はやめていただきたいです。しかし、オシリをどうしても洗いたい場合は、「座浴」をおすすめしています。

 座浴であれば、オシリの皮膚にかかる負担が軽くなります。

 方法は、次の通りです。

1.大きなタライにぬるま湯を張る

(浴槽にオシリが浸かるくらいのぬるま湯を張るのもOKです)

2.オシリをぬるま湯につけ、パチャパチャと汚れを洗い落とす

 座浴をする際、わざわざオシリの穴の周りをこすったりしなくても、汚れは自然に落ちてくれます。

 タオルで拭くときも、こすらずに優しく押さえ拭きしてください。


佐々木みのり氏

――ほかに間違ったトイレの入り方はありますか

 患者さんのお話を聞いていると、意外と多くの方が間違ったトイレの入り方をされているので、話しを聞くたびに驚きます。中でも多いのが、次の3つです。

1.トイレに長時間いる

2.無理矢理いきむ

3.トイレを我慢する

 1つめの「トイレに長時間いる」。

 トイレがリラックスできると言う人が多く、「トイレだと読書が進む」と言う人までいます。これは、オシリへの負担だらけです。

 なぜなら、トイレで座ると肛門が座面よりも下になるので、座っているだけでもオシリがうっ血したり、無意識にいきんだりしてしまうからです。

 2つめの「無理矢理いきむ」。

 トイレで排便している際、残便感があるので「もう少し頑張って出そう」として無理矢理いきむと、肛門が腫れてしまいます。肛門が腫れると、痔を発生させるきっかけとなります。特に、いぼ痔が発達している人によく見られる習慣ですので、無理矢理いきむことはやめて、再度便意が来るまで待つようにしましょう。

 3つめの「トイレを我慢する」。

 便意を感じた時、「今、行けないから」と我慢した結果、トイレに入ったころには便意はなく、何も出ないということはありませんか?

 電車の中や会議中、授業中、接客中など、社会生活を送るうえで、トイレを我慢しなければならないことは、年齢に関係なくあるでしょう。

 トイレを我慢することは、体にとって「不都合」なことです。便意がないまま無理矢理いきんで便を出そうとするため、便が出し切れずに直腸・肛門に残ってしまいます。

 便意を我慢することで、直腸に便がずっと溜まった状態になると、肛門のしまりが悪くなります。その結果、痔だけでなく、下着の汚れや便臭に悩んだりなど、さまざまなオシリのトラブルにつながるのです。

「トイレに行きたくなったらすぐに行く」ことを心がけてください。

――トイレに入るときに気をつけることはありますか?

 トイレに入る際、次の3点に気をつけることがおすすめです。

1.オシリを拭く回数

2.姿勢

3.いきみ過ぎる

 1つめの「オシリを拭く回数」ですが、 排便後、何回オシリを拭いているかご存知ですか?

 意識していない方が多いので、一度意識して数えてみてください。

 10万人以上の患者さんのトイレ生活を調査してきて、これならオシリの薄い皮膚にも負担にならないという回数が、3回です。

 回数だけでなく、拭き方も大事です。ゴシゴシこすらず、紙を丸めてやさしくポンポンと押さえ拭きをしてください。

 オシリを拭いたあと、紙を見ていますか?

 拭いた紙は、その都度必ずチェックしてください。3回拭いたあとの紙に便がついていたら、直腸に便が残っている可能性があります。拭いた紙は、排便のバロメーターになるので、必ずチェックしましょう。

 2つめの「姿勢」。スムーズな排便の姿勢として、ロダンの「考える人」のポーズがオススメされています。この姿勢をとると、直腸と肛門の角度が真っ直ぐになり便が出やすいからです。医学的には正解なので、大多数の人はこの姿勢でいいのかもしれません。

 しかし、来院される方の中には、「考える人」の姿勢だとかえって便が出にくい、便が残る感じがすると訴える人が結構いらっしゃいます。

 上体を前屈みにするよりも真っ直ぐのほうが良い、あるいは、のけぞった姿勢にすると最後の「ひと出し」が出てスッキリするという方もいらっしゃるんです。そんなに人によって違うのか、と思うかもしれませんが、実際に、肛門から指を入れて診察すると、直腸と肛門の角度や腸の大きさと形は、十人十色。自分自身が便を出しやすければ、その姿勢が正解です。オススメされている方法が合わないときは、いろいろ試してみてください。

「考える人」の姿勢で便が出にくい人は、かかとを少し持ち上げるのではなく、足の裏全体がしっかり床につくようにして、下半身を脱力してみてください。足の裏全体が床につかない場合は、足台や段ボール箱などで高さを調節しましょう。

 かかとを浮かすと脚自体に力が入ってしまうため、余計な力を抜くことが大切。実際、スムーズに便が出るためオシリにかかる負担も少なくなります。

 最後の「いきみ過ぎないように排便する」。

 間違ったトイレの入り方でご紹介したように、無理矢理いきむことはオシリのトラブルに繋がります。

 特に「トイレに行きたくなって排便しているけれど出ない」「便が出たけれど、少量しか出ずに残っている」「今、出し切りたい」といった状態の場合、無理矢理いきんで便を出し切ろうとしますが、オシリに負担がかかります。

 このとき、できあがった便は出口付近まで来ているため、下腹部を揺することが効果的です。

「下腹部揺すり」は、リラックスした状態で行ってください。

 まずは、便座に座り、ロダンの「考える人」のポーズのように上体を少しだけ前屈みにします。このとき、かかとは、床にしっかりつけても、つま先立ちにしても、どちらでもOKです。

 次に、両手の親指をおへそに置き、手のひらでおへそよりも下の部分を包み込むようにもちます。そして、そのまま、お腹を上下にやさしく揺すりましょう。

 たったこれだけ、とても簡単なんです。「下腹部揺すり」を行うと、数十秒で便意が来たり、軽くいきむだけで便が出やすくなりますよ。ぜひ、やってみてください。

佐々木みのり(肛門科医)

あさ出版
2021年5月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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