日本で30年以上暮らした外国人が語る、海外では評価が低くても実はスゴい日本人の習慣

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日本のおもてなし

 新型コロナの影響で1年延期になった東京オリンピック。組織委員会のメンバーの失脚、大多数が五輪開催に反対している状況を乗り越えての開催となりました。このように逆境での開催となりましたが、ふたを開けてみれば開催後は、海外メディアや海外の選手から、日本人の配慮や親切さを評価する意見が多数見受けられました。

 そこで、9月18日放送の教育バラエティー番組「世界一受けたい授業」(日本テレビ系、土曜午後7時56分)に出演したルース・マリー・ジャーマン氏が、ハワイから日本にやってきて30年以上暮らしている中で感動した日本人の習慣について、著書『日本人がいつまでも誇りにしたい39のこと』よりご紹介します。

やると言ったらやり通す責任感

 海外でのビジネスシーンでは、「○○をお願いします」と頼むと「OK!」と元気よく返事され、「明日までにやる」とか「5分後にやる」など、「納期」まで明言するケースが多いです。
 ところが、その言葉を信じて待っていると、納期を過ぎても頼んだことができていなかったりします。

「例の件、どうなりましたか」と尋ねると、「え、何でしたっけ」や「あ、それですね。すぐにやります」と、ふたたび納期を延ばされてしまう有様です。
「いい加減」と言われても仕方がありません。日本以外の国ではこういうことが日常茶飯事で起きており、「そんなものだろう」と諦めながらその「いい加減」を我慢し、ある意味では楽しんでいるのです。

 けれども、日本のビジネスパーソンは違います。「やる」と言ったことは必ずやってくれます。
 ビジネスでいちばん気持ちがいいのは、“安心感”です。日本人はよく考えてから返答し、行動するのが一般的で、そこからは安心感が生まれています。日本流ビジネスから、いつの間にかケアフル・シンキングの大切さを覚えました。何かを提案されたときに、「そうですね、ちょっと考えます」と、自然に答えるようになっているのです。

 外資系企業の人たちはよく、日本の会社は結論を出すのに時間がかかりすぎる、と言います。なかにはイライラして、腹を立ててしまうような人もいます。

 その気持ちも、わからないではありません。
 だから私は、外国のビジネスパーソンに、「日本ではなかなかYESがもらえないけど、YESと言われたときは、ほぼ確実に実行されると思ってください」とアドバイスをすることがあります。

 日本の会社には、「報・連・相」という言葉があります。話をよく聞き、上司や同僚に報告・連絡・相談を徹底的に行い、責任ある答えを出す。
 時間はかかるかもしれませんが、この姿勢は、いまのビジネス界の速すぎる変化や動きに、確実性をもたらす貴重な効果があるのではないでしょうか。


ルース・マリー・ジャーマン

日本では想像力が「思いやり」になる

 日本にいると、日本人の我慢強さと、思いやりの美しさを実感します。
 アメリカ人は一般的に、我慢が苦手です。気持ちが高まると、総合的な視点で深く考えずに、感情的に行動を起こしてしまいがちです。行動力や実行力として評価されることもありますが、判断ミスに結びつくシーンもたびたびあります。すぐに「白・黒」を判断して、即動き出すのはアメリカ流なのです。

 ところが日本人は、いったんまわりに対しての影響を考えます。

 ニューヨーク、デリー、ホノルルなど、どこの都市へ行っても、大きなクラクションの音が頻繁に聞こえてきますが、東京はクラクションの音があまり聞こえません。
 青信号で20秒ほど待っても動かない前の車に対して、「信号が変わっているよ」と気づかせるちょっとした音を鳴らすことはありますが、日本のどこへ行ってもクラクションといえばこのくらいです。警告やクレームではなく、合図や気づかせるためのサイン、のようです。

 日本人がクラクションを滅多に鳴らさないのは、「いま鳴らすと、歩行者がビックリするかもしれない」「前の車は高齢者かもしれない」といった独特の「想像力」を備えているからです。

 まず人に迷惑をかけないようにと考える。そして、何が人の迷惑になるか、それをしないためにはどんなふるまいが良いかを、それぞれが想像する――これが日本人のルールです。人に迷惑をかけないためには、我慢(他人への忍耐)強さも必要になります。この我慢強さを通して、日本は集団調和がとりやすい環境となり、独特の「団結力」が維持できるのでしょう。

 日本における「団結力」は、スポーツで勝利を勝ち取るためのハードなチームワークではなく、あらゆる場面にある「平凡な思いやり」です。相手や状況に対して想像力を働かせ、ちょっと様子を見る習慣があるのです。

 日本ではこの習慣が、転職の際に慎重なシミュレーションをしたり、クライアントの利益を考えたり、部下の能力と仕事量を考慮したりするなど、さまざま面で役立っているようです。

会話術から見えた日本人のやさしさ

 私は日本人の会話術について、長い間勘違いしていました。
 もともと世間話が苦手だったため、天候やテレビ番組、家庭の料理などについてひとしきり話し、本題になかなか入らない日本人流の会話を苦しく感じていたのです。
 パーティーの席でも、政治やニュース、世界情勢について熱論を交わすことが好きな私にとって、表面的な世間話を長々としている日本人どうしの会話を、少し「浅い」と感じていました。

 私にとっての「会話」はチャレンジ。話術を使って“楽しい対立”をしてきました。会話に心地よさよりも、刺激を求めがちだったのです。
 意見を交わし、お互いのアイデアや考え方を出し合ううちに、会話が発展しより深くなることもあれば、意見がまったく一致しないときもあります。たとえ意見が対立しても、お互いの尊重があれば、「自分はこういう意見だけど、あなたは別の意見をもっているのね」と理解し、またひとつ成長できるような気がしていました。意見が違ったとしても自分の考え方を知ってもらい、相手の考え方を理解するための良いチャンス――。それが「会話」の認識だったのです。

 ですから、当たり障りのない話ばかりしている日本人どうしの会話は、どこかもの足りませんでした。自分の会話スタイルこそが、ほんとうのコミュニケーションだと思い込んでいましたが、大変な思いあがりであったと、あるできごとが気づかせてくれました。

 リクルートで働いていたときの同期会でのことです。
 同期は非常に仲がよく、それぞれ独立してからも定期的に集まって、近況報告をしながら食事を楽しんでいました。
 その日も、リクルートにいたときのことや、お互いの近況の話に花を咲かせていました。
 じつはそのとき、私は大きな転機にあり、暗闇のなかをさまよっていました。結婚生活が、崩壊寸前だったのです。夫から離婚を宣告され、自分を否定してばかりいました。
 同期仲間との楽しい時間を台無しにしたくない、同僚たちに心配させたくないという思いから、必死で苦しみを隠していました。

 すると突然「だんなさん、元気?」と元同僚の女性から聞かれたのです。
 彼女にしてみれば、なにげなく聞いたのでしょう。重い空気が一気に流れました。
 いつもなら、「元気よ!」と明るく振る舞えるのに、このときばかりはカラ元気さえ出ません。

「だめかも……」

 そうぽつりとつぶやくと、それまで胸に溜め込んでいたものが一気にあふれ出し、ついに事情を打ち明けました。

 でも、伝えることができたのは「離婚かも……」ということぐらいでした。それ以上話すと感情があふれてしまいそうでずっと下を向いていました。すると黙って聞いていたうちの一人が「じつは……」と、同じような深い苦しみを抱えていたことを話してくれたのです。
 彼女の細い肩は震えはじめ、目から大きな涙がぽろぽろと落ちてきました。私たちは抱き合い、気が済むまでしばらく泣いていました。それからは彼女と何度か会って、お互いの近況を報告し合う仲になりました。

 日本人の会話は、まるで水面が暖かく心地がいい海のようです。水面にいるといつでも呼吸ができ、周りが見渡せるため比較的安全です。
 水面に浮かんで波が来るのを楽しみに待つサーファーのように、日本人は会話の浅いところを楽しみながら、人生をスムーズに過ごしているように映ります。

 私は会話の海のなかに潜って、水面では見えないものを見たい、深い何かを感じたいと思います。そこは息をするのが苦しく、心地いいとはいえない環境ですが、刺激的で発見や気づきがあります。そういう会話や人との関係を望んできました。

 でも、同期会での一件を経て、日本人の会話術をもっと大きくとらえるようになりました。日本人の会話術、コミュニケーション術は、人生をスムーズに進めるための知恵なのだと気づいたのです。日本人も水面に揺られているだけでなく、ほんとうに必要なときは、海の底まで深く潜り、本質的な会話で人間関係を深めようとすることも知りました。

 普段は水面の心地よさを楽しみ、ここぞというときは深く潜る。
 それが日本人のコミュニケーションスタイルなのです。

ルース・マリー・ジャーマン(会社経営者)
米国ノースカロライナ州生まれ、ハワイ州育ち。1988年にボストンのタフツ大学国際関係学部から(株)リクルートに入社し、以来30年間日本に滞在。2011年まで(株)スペースデザインに在籍し、新規事業として、来日する外国人向けの家具付きサービスアパートメントを東京・横浜・ドバイにて開発・運営業務に携わる。1998年に日本語能力試験(JLPT)1級を獲得し、2006年に、宅地建物取引士となり、公益財団法人日本女性学習財団評議員、一般社団法人HRM協会の理事に就任。2012年4月より(株)ジャーマン・インターナショナルを起業。日本企業と外国人の潜在顧客をつなげるため、経営戦略と営業・広告活動をサポートしている。2018年に日本企業のグローバル化トレーニングを行う「Train toGlobalize」事業も立ち上げる。高校・大学・リクルートシーガルズ(現オービックシーガルズ)でのチアリーダー経験を生かし、在日米国商工会議所のスペシャルイベント委員会の委員長、神奈川県地方創生推進員を務める。また、復興庁が実施する「新しい東北」プロジェクトの有識者として、全国の自治体・企業での講演活動を通して、日本が日本らしいグローバル化を果たせるよう、応援している。

ルース・マリー・ジャーマン(会社経営者)

あさ出版
2021年9月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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