現役の救急科専門医として新型コロナウイルス患者の治療に当たる著者の初小説。重症患者を治療する大阪の病院を舞台に、研修医の視点で現場の混乱や医師の葛藤がリアルに描かれる。
病床や医療機器が足りない戦場のような院内で、医師や看護師は「命に優先順位を付けること」を強いられる。休息はなく、感染の恐怖とも隣り合わせ。医療従事者としての責任と、人間としての心の悲鳴が交錯する。
日々更新が続く重症患者数や死者数は、一人一人の命であり人生の数ともいえる。コロナ禍で命を落とした人や家族の顔が目に浮かぶ一冊。(書肆侃侃房・1650円)
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2021年11月21日 掲載
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